第44話 不適格者
どうして不適格者がこんなところにいるんだ?という顔をしてるね。
僕はまだ固まったままだったけど、ヤコブは濡れた上着を着て、語り始めた。
高校を卒業して、18歳で結婚した時はまさかこんなことになるなんて思ってもいなかった。
ヤコブは手を止めずに話し続ける。僕はそばに座り込んで話を聞いた。
結婚して1年たっても子供ができず、2年たって私たちは離婚してそれぞれ別の相手と結婚した。
「はい」それは僕たちの故郷の惑星ではよくあることだった。
それからまた2年たっても子供はできずに、私は何度も離婚と再婚を繰り返した。
うん、2回3回と離婚と再婚を繰り返す人はいる。それもまだ聞いたことがあるというレベルで知っている。
最後に結婚した時、私はもうすぐ33歳だった。最後の結婚相手も31歳だったし彼女も今まで1人も子供を産んでいない。さすがにもうダメかもしれないと思い、法律に違反すること、悪いことだと判ってはいたけど、
「シークレットチャイルドですか?」
うん。シークレットチャイルドを探した。でも、
「でも?」
ジェイミィは覚えているかな、今から8年前、シークレットチャイルド斡旋組織が摘発されたことを。
「覚えています」
そうか、あれは大きなニュースだったしね。ともかく、私たちがシークレットチャイルドを探し始めた時にあれが起きた。
だから、シークレットチャイルドを探すのはとても難しくなった。シークレットチャイルドを欲しがる人の数は変わらなくても、3人目ができてしまった夫婦はその子を産まずに闇の川の向こうに流してしまえばいいわけだから。
それは聞いていると苦しくなる話だった。アウラは闇の川の向こうに流されなかっただけマシなのだろうか。
私たちは焦っていた。けれどその時妻の妊娠がわかったんだ。
よかったですね、僕はそう言おうとして、すんでのところで止めた。よくなかったからヤコブの腕に焼印があるんだ。
私は嬉しかった。いや、違うな、嬉しいが2割でほっとしたというのが8割ぐらいかな。
ヤコブは申し訳なさそうに言うけど、ほっとしたというのは当たり前の感情だと思う。
ヤコブの話は続く。
私たちが喜んだのもつかの間で、その子は羊水検査で引っかかってしまった。生まれても生きていけないぐらいの障害があると言われてそのまま強制堕胎だった。
「ひっ」僕の口からは悲鳴が漏れたかもしれない。ヤコブは淡々と話すけれど。
私はすぐに妻と離婚して、彼女はその時まだ33歳だったからもう1回ぐらいはチャンスがある。けれど私は34歳になって半年過ぎていた。
そして35歳の誕生日の朝、役人が私を迎えに来た。
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