第42話 事実

もちろん誰にでもこんなこと言うわけないじゃない。

「じゃあ何故僕には言ったの?」

それはジェイミィが聞いたからでしょ。

「あ、、、」

なーんてね。ホントはジェイミィなら私が何を言ってもびっくりしないで聞いてくれると思ったから。

褒められた、のか?いやいや、僕は充分びっくりしてますよ。


ああ、あと、フランは知ってる。

なんでフラン?と思ったけど、ユウミとフランはどちらも食事の準備の手伝いをしていて仲がよかったんだっけか。

「フランはなんて?」

フランは「理解する」って言ったわ。なんか中途半端だわ。

僕はそれはいい答えだと思う。


それからね、ケイトにも聞いてみた。「性欲があるという女性がいたとしたらどう思いますか」って。

「うん、ケイトはなんて言ったの?」

ケイトは、「そういう人がいたとしてもおかしくはない」と言ったわ。優等生の答えよねぇ。


次の朝、僕はラボでタブレット端末に向かっていた。

僕はこの惑星に来てからすごく勉強熱心になった気がする。

で、調べているのは昨夜ユウミが言った話だ。答えにたどりつくまで少し手間取ったけど答えはあった。

大昔、女性にも性欲があった。そのころは1組の夫婦の間に子供は沢山いたけれど当時は病気や災害などで大人になる前に死んでしまう子供も多く、人口は適正に保たれていた。

やがて医学が発達して人間が病気で死ぬということが無くなり人口が増える。その過程で女性は性欲をなくし、おかげで人口はまた適正に保たれるようになった。

うん、びっくりはするけど理解も納得もできる話だ。

そんな中でユウミのように性欲があるという女性がいるのは、子供が両親に似ていなくて、でも祖父母の誰かには似ている、みたいな話なんだろうか?

そして女性には性欲はないと教えられるのはそれを隠しておいたほうがいいから?

ああ、ぼくはサニアの考え方に影響をうけているのかもしれない。

けれどもしそういう女性がある程度いるとしたら、隠しておいたほうが利益がある。人口はこれ以上増やすわけには行かないんだから。

僕はこれに関してもサニアの意見が聞きたいと思った。


でもサニアが「私も性欲がある」と言ったらどうしよう?それはちょっと、いや、かなりうれしいかもしれない。

やばい、興奮してしまった。


僕は一旦3番のコテージに戻ってシャワーを浴びることにした。

この惑星に来て贅沢だなあと思うことが沢山あるけど、この、水を自由に使えるということが一番贅沢かもしれないと思う。合成ソーセージとか本物パンは魅力的だけれど、水が豊富なのはいい。ここで穀物が実るようになれば。僕は出稼ぎでもいいからまたこの惑星に来たいと思う。


シャワーを浴びてスッキリした僕は、草を食べている鶏の様子を見に、というよりは鶏の様子をアウラに聞こうと鶏小屋に向かう途中で7番のコテージから出てくるユウミを見かけた。

こいつ、こんなところで何をやってるんだろう?その時僕は、あまり深く考えずに鶏小屋に向かった。


そこにアウラは居ずに、鶏の糞を持って畑に行ったのかと思ってそっちに行くと、ケイトとサニアが立ち話をしているのが見えた。

草を鶏に食べさせて、その糞を肥料にするという計画は順調に進んでいるようだった。

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