第41話 ユウミの目的

結局、2日目の夜もコテージに戻るとすぐにユウミとそういうことになってしまった。先にシャワーを、という僕の望みはかなえられなかった。

けれど。

ユウミの身体が纏っているこの甘い匂いは何だろう?甘いといってもそれは、以前故郷の惑星の僕の家のシャワールームにあった、フローラルの香りというシャンプーのような甘ったるい人工的な香りではなくて、例えていえばそれは合成ソーセージの匂いにほんのちょっと似ていて、こんなことを言うといい匂いとは思えないかもしれないけど、なにかこう、僕の深いところに訴えるような、脳が溶けていくような、ユウミを抱きしめること以外は考えられなくなるような、そんな匂いだ。

と言っても、それはシャワーを浴びたら消えるものでもなくて。


ユウミとそういうことをして、シャワーを浴びてからもう1度そういうことをして、それからコーヒーを飲んだ。

ああ、そうだ、僕はユウミと話がしたいと思っていたんだけど、どんな話をすればいいんだろう。

僕は以前リザリィに聞いたのと同じ話を持ち出した。

「ユウミはどうしてB計画に参加しようと思ったの?」


そういうことがしたかったから。

「え?」

私、そういうことがしたいの。

「えええええーっ!?」


僕はこの青い風の惑星に来てからびっくりばかりしている。

アウラにシークレットチャイルドの話を聞かされた時は天地がひっくり返るほどびっくりした。

リザリィは、そうだ、僕が成功報酬の話を知らなくてびっくりさせたんだ。それから、サニアの陰謀論でびっくりして、まあこれは完全に信じたわけじゃないし話が途中のままだ。


ジェイミィも女性には性欲が無いと思ってるの?

「思ってるよ。だって、、、そうじゃないの?」

それは太陽が東から昇って西に沈むようにあたりまえのことで、そう教えられてきたしそう思ってきた。

「男性には性欲があって女性には無い。でないと人口が増えすぎてしまうじゃないか」

そういう僕にユウミは、じゃあなんで3人目の子供を作る人がいるの?

「それは、その」確かにそれは疑問だった。

「それは夢の国に行かない男が悪いんじゃないの?」

そんなに単純な話じゃないわよ。ユウミは僕から視線を外した。


とにかく、女性に性欲は無い人も多いんだろうけど私はあるわ。

だからここに来たの。ここだったら好きなだけそういうことが出来ると思ったの。


うん、好き放題されています、少なくとも僕は。


故郷の惑星にいて、結婚はまあしたとして、そういうことをすればたいていはすぐ子供が出来る。それで2人子供を産んだら卒業って、少なかったら2回しかそういうことができないじゃない。

まあ理屈はそうだけど。

でも他の惑星では、まだ誰も子供を作っていない。そういうことをしているにもかかわらずね。

だから私が行ってもそう簡単に妊娠するとは思えないし、できちゃったらそれでもいいかなって。どっちにしても1人は子供を産まなきゃならないんなら、ここで産めば1000万コインが子供のものになるでしょ、だったら子供の学費にーってあくせく働かなくてもいいじゃない。

でもって、故郷の惑星に帰ったら、子供を1人産んだあとはなかなか子供が出来ない男性と再婚するの。そういう男性にとっては1人子供を産んだ女なんてありがたい相手よねー。

でもそれで子供が出来る可能性は低いから、2年とかで相手を替えてー、ってするの。


目的が「そういうことがしたい」であるならそれは合理的な考えかもしれない。自分のことしか考えていないようにも思えるけど。


「それはあんまり他人に言わないほうがいいと思う」

僕はようやくそれだけを言えた。

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