第39話 誘惑のユウミ

その夜コテージに帰ると暗い顔のリザリィが言った。

ジェイミィ、ダメだったわ。ジェイミィの子供は出来なかった。

「え、」まだ5日あるけど、、、

女の子の日がきちゃった。「そっか、ごめんね」ジェイミィのせいじゃないわ。「じゃあリザリィのせいでもないよ」

運が悪かった、のよね。B計画の参加者に選ばれたから、私、運はいいと思ってたわ。

B計画の参加者を選ぶ選考って、最初が学力テストで次が身体検査、最後が抽選じゃない?あれ、抽選で選ばれるっていうことは運がいいということだから、運がいい人を集めているという話なんだけど。アウラはよっぽど運がよかったのね。まあ結局残念なことになっちゃったけど、それはこの惑星のせいよ。


うーん、サニアの話を聞いてしまった後ではいろいろ思うこともあるけど。だいたいサニアの話を完全に信用したわけでもないけどそれでも。


相性、というのもあるから。僕の言葉はリザリィの慰めになっているんだろうか。

アウラとジェイミィはよっぽど相性がよかったのね。

「リザリィだってこんなに素敵なんだから、リザリィと相性のいい人だってすぐに見つかるよ」

僕の故郷の惑星では、子供がすぐにできるかどうかは運と相性だとされている。そういうもののせいにしておけば、本人は救われるのだろうか。


次の日もその次の日もサニアはラボに顔を見せなかった。もっとも僕もずっとラボにいたわけではないし、パートナーチェンジの日が近く、B計画の参加者の間には浮き足立った空気が流れているので、そんなときに現在のペアではないサニアと2人で話していたら面白くないウワサが流れるかもしれない。


女の子の日のリザリィとはそういうこともできないので、僕たちは一緒にいられる最後の何日かの夜を他愛の無い話をして過ごした。そして最後の日にはちゃんとリザリィにいうことが出来た。

「リザリィとペアだった1ヶ月、僕は幸せだった」と。


2回目のパートナーチェンジの日、僕は目でサニアの姿を探した。サニアがいない?あ、なんだ、デカいカイルの影になってた。

僕がサニアの方へ行こうとした時、誰かが僕の腕にしがみついてきた。

ジェイミィとっぴ!

「とっぴって何だよ?」それはユウミだった。

じゃあ言い直す。ジェイミィ確保っ!

言い直せばいいというものでもないんだけど。

ジェイミィは私とペアになるのはイヤ?ユウミが小首をかしげて僕を見上げる。

「イヤというんじゃないよ」

僕の理性がどこかへ行ってしまった。ユウミってかわいいなぁ。うん、かわいい系か美人系かと聞かれると両方の要素を持っている。僕は、そうだね、僕はサニアとそういうことをしたいというわけではない。サニアとはもっと話をしたかっただけで、話をするだけなら別にペアじゃなくても出来る。僕の理性は本能の後押しをした。


ユウミも1000万コイン狙いなんだろうか?僕だって1000万コインは欲しくないわけじゃない。でもそれで子供の一生を決めるというのはどうなのか。まあ1000万コインは子供のものだからその子は間違いなく大学まで行けるだろう。そしたら上流階級になれるわけで、別に不幸になるということじゃない。

僕がそんな事を考えている間にユウミはさっさとコテージの鍵を受け取ってきた。


今回のコテージは3番だった。ソファは1番のコテージと同じ色だったけど、コーヒーセットを置いてある場所が違って、マグカップの模様も違う。あいかわらず芸が細かいな、などと考えていたら、ユウミに寝室に連れ込まれてベッドに押し倒された。

え、ちょっと待って、いや待たなくてもいいけど、せめてシャワーを、ね、ユウミさん?

僕のそんな声は届かず、ユウミの身体は魅力的で、僕は激しく任務を遂行してしまった。


「ちょっとシャワー浴びたい」僕はシャワールームに逃げ出して、熱めのシャワーを浴びるとちょっと落ち着いた。これはB計画で、だったらユウミの行動はどこもおかしくはない。ちょっと、というかかなり積極的だけど。


シャンプーの泡を流していたら、ユウミが入って来た。洗ってあげる。ユウミはボディソープを泡立て始めた。

ここのシャワールームはキレイだけど、広さは故郷の中流階級向けのアパートのシャワールームと同じぐらいで、はっきり言って狭い。

そこに人が2人いたら。全裸のユウミの身体はどうしたって僕に密着することになって、僕の背中を擦っているのはタオルとかユウミの手のひらとかじゃないくておっぱい!?

あの、ここは天国ですか?

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