第38話 得をするのは誰か
失礼。とラボに入ってきたのはドクターだった。
じゃあどうして鶏は卵を産まないの?無精卵でいいのに。
サニアは鮮やかに話題を変える。
むせいらんって何だろう。わからないけど、僕は「そうだねー」とりあえず返事をしておく。
うん、でもね、どうやら受精はしているようなんだ。
ドクターが話に入ってくる。ボロが出ないように僕はあんまりしゃべらないほうがいいかな。
じゃあその後大きくならないということですか?
サニアがうまく話を拾ってくれた。
そうなんだよねー、食料ということで考えるなら無精卵でも有精卵でもどっちでもいいんだけど。卵は栄養があるしなにより美味しいからねぇ。
「僕は卵なんて食べたことがないんですが」この話題ならなんとか入れそうだ。
私だって卵とわかる形で食べたのは2回か3回だけだよ。ドクターが言った。上流階級でもそんなものなのか。
うん、だから穀物が先に実ってくれたほうがありがたいかなぁ。
ドクターはそう言うと本棚から1冊の本を抜き取ると行ってしまった。
私もそろそろ行くわ、もうすぐアウラが鶏の糞を持って来る時間だし。
そう言うサニアに僕は「また話がしたい」と言った。
サニアも、また来るわ、そう言って行ってしまった。
それにしても。
サニアと僕は子供ができやすい日とか出来にくい日の話しをしていたはずなのに、何故そんな陰謀みたいな話が出てくるのだろう。
もしサニアのいうことが本当なら、100%ではないにしろ子供が出来ないという夫婦にとっては朗報だし、3人目の子供を生んでしまった人、こっちは自分のせいという気もするけどその人たちにとっても有益なはずで、どうしてそれを隠すのかさっぱりわからない。
いやまてよ、隠すということはそれで誰か得をする人がいるんだろうか?
もし子供ができない夫婦に子供ができたら、その分人口は増える。故郷の惑星の水や食糧不足は僕が思っていたより深刻でギリギリの状態だと言ったのは所長だったっけ。
人口が増えたらそりゃみんな困ることになるけど、子供ができない夫婦なんてどれぐらいいるんだろう?
人口を増やさないために子供ができやすい日があるという事実を隠すというのはメリットに対してデメリットが大きすぎると思う。
だいたい子供がいない夫婦が子供を生んだって、その分3人目の子供を生む人が減ればいいんだし。
考えても結論なんか出ない。
僕は考え疲れて「むせいらん」と「ゆうせいらん」に付いて調べてみた。
こっちはすぐに情報が見つかったし、ていねいにわかりやすく解説してあった。
やっぱりサニアの勘違いじゃなかったのかなぁ。どちらにしてもサニアとはもっと話がしたいと思う。
5日後の次のパートナーチェンジではサニアを誘ってみようかな?
ああ、でもサニアには僕は馬鹿だと思われているかもしれないし、なんだかんだで断られそうな気もする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます