第17話 青い星の雨

どうしてすぐに警察に行かなかったの!

僕の声は裏返っていたと思う。


アウラは冷たく笑った。

どこかに訴えたとして、誰がそんなこと信じると思うの?「夢の国」があるから性犯罪はないものとされているのよ。


「夢の国」それは、公娼だった。18歳以上の男性は誰でも利用することが出来て料金は無料。そこに居るのは35歳になっても子供を産むことが出来なかった女性たちだ。

だからそこでは、妊娠する心配が無くなんでもできると。そこで男性の性欲が解消できるので性犯罪などというわりの合わないことをする者はいないとされていた。


例え私が何を言ったとしても、性犯罪なんてありえない、自分が誘ったのだろうと言われて終わりよ。だから私は誰にも何も言わずに、そして当たり前だけど出発前にそんな検査なんてなくて、私がB計画に参加できなくなると思い込んでいたあの女はさぞ残念だったでしょうね。


僕は冷たい凍るような笑いというものを初めて見た。


だからその子はあの時の男たちの中の誰かの、、、

「それ以上言わないで」

僕はアウラの言葉を遮ったけれど。


長い沈黙。


アウラの重すぎる話に僕は何も考えられなかったし何も言えなかった。


長い長い沈黙。


アウラにどんな言葉をかけても薄っぺらく聞こえそうだ。


びっくりした。ようやく僕が口に出来たのはそんな馬鹿みたいなセリフだった。

その言葉にアウラは、うん、自分でもびっくりしてる。そう言った。つらいとかヒドイとかではなくて。


ヘンな話だけど僕はアウラのその言葉に少しだけ救われた気がして、ようやく次の言葉を口にする。

僕はどうすればいい?

この話を所長にする?と聞くアウラに僕は盛大に首を振った。そんなアウラを陥れるようなことができるわけがない。彼女はなにも悪くないのに。


だったら、何もしないで、黙ってて。知らなかったことにして。


そんなの、いつかはわかってしまうよ。言いたかったことは沢山あるけど。

ちょっとコーラを入れてくる。ついでに水も汲んでくるよ。2杯づつコーヒーを飲んだので、ペットボトルの水はもう空だった。

アウラにもなにか入れてこようか?僕はそう言ったけどアウラはいいえと答える。

ねえ、もう遅いし続きは明日にしよう。先にシャワーを浴びていて。


考えることが多すぎて僕は独りになりたかった。


空のペットボトルを持ってコテージの外に出るとなんだか冷んやりとした。

漂うように細かい雨が降っていた。夜中に霧のような細かい雨が降るとは聞いていたけど、それは僕たちがこの惑星に着いてから初めての雨だった。

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