三. “魔界”の顕現
[冥王の復活]
大要塞タス・ケルティンクス。
それは“黒き災厄の時代”に冥王ザビュールの命令で建造された、物質界アリューザ・ガルドと“
かつて英雄イナッシュが“宵闇の公子”レオズスと共に、冥王を“
レオズスは自らの分身たる影の龍を創り、その龍がタス・ケルティンクスを含む“黒き大地”一帯の守護者となった。
それから長い時が経ち——予言者ハーヴァンは“
冥王は封印を打ち破った後、数十年かけて力を回復させ、とうとう復活を遂げたのだ。
ザビュールは深淵からの一大反攻作戦を企てて軍勢を招集、編成する。“
時を同じくして——アリューザ・ガルド全土に響き渡る轟音と黒き雷。これは自然の力によるものではない。冥王の力を示すものであった。
冥王の居城たる
時を経ずして他の“
すなわち、
暗黒の城塞 ヴェカル・ケルティンクス
黒の門 ヴェカル・ディズィーグ
魔都 イザーヴ・アド
冥底の尖塔 ルゲイ・ンデュム
絶望の防壁 ン・ゼルーブ山塊
である。
“
それから大津波が襲い来る。
太陽は色を失い漆黒に染まり、白銀であったはずの月も暗黒の色を放つ。
アリューザ・ガルドは闇に支配されたのだ。
アリューザ・ガルドの住民たちの大混乱をよそに、大要塞タス・ケルティンクスから地上へと湧き上がる
[“
“
“昏き城”イズディル・ザヴァルの頂きに立った冥王が、自らの姿を幻視で天上高くに浮かび上がらせたのだ。あまりに神々しく、美しく、そして禍々しいその姿。幻像であってすら、真正面から見てしまった人間は、一人残らず狂い死んでしまった。超常たる神々の一柱ザビュールを、ただの人間ごときが見るものではないのだ。
冥王はアズニール語で、人間ひとりひとりの心の奥底へと語りかけた。それは明確な敵意、殺意、憎悪を孕んだ宣戦布告であり、抹殺宣言であった。
このたび冥王が求めるのは、かつてのアリューザ・ガルドの隷従などという生温いものではなかった。人間たち、ディトゥア神族、そしてアリュゼル神族の
ザビュールに異を唱え、彼を深淵へと追いやったすべてのものを打ち滅ぼし、今度こそザビュールが統べるのだ。
冥王自身による布告をもって、“
すでにアルトツァーン、メケドルキュアの二国はない。しかし、“最後の勅命”に反してこの地に残った者達の末路は悲惨なものとなった。魔族らは一切の容赦なく、破壊、殺戮、蹂躙——思いつくかぎりの悪逆を為していく。軍勢の昼夜を厭わぬ苛烈な攻撃により、
そんな破竹の勢いの軍勢が唯一、攻めあぐねていた場所がある。こともあろうに、“
そこは“守人たちの村”と呼ばれ、今は“ダフナ・ファフド”らが住む場所。彼らの戦闘力は人間とは思えないほどに凄まじく高く、また地の利と魔導の防壁を得ているため、“
冥王はいったん
西方のバイラル諸国にあらためて宣戦を布告するかのように、魔都ガレン・デュイルから暗黒の波動を帯びた数多の光帯が空高く放たれ、カイスマック島の東側海岸線沿いに次々と着弾。それらは大爆発を引き起こし、周囲は瞬時に廃墟と化した。
空から飛来した“
しかしさにあらず。
カイスマック島は無人となっており、人的被害は皆無だった。
ここにいるのは一匹の龍、そして一人の少女のみ。
破壊し尽くされた街の中、彼女は真っ白い龍に騎乗すると、右手を天に高々と掲げる——なにかの合図のように。
第二波の攻撃部隊がカイスマック島へ向けて出撃しようというその時、漆黒の空、その天頂に巨大な光輪が出現、やがて輪は幾重にも重なり、まばゆい紋章をかたどる。
神々しい紋章の中心から一条の真っ白な光の帯が放たれた。それはまっすぐに“昏き城”イズディル・ザヴァルへと向かい——直撃。あろうことか、一瞬にして冥王の本拠地は灰燼と化したのだ!
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