第8話
「ぼく、もう食べられないよ」
少年は言った。皿の上の魚は、半分も食べられてはいなかった。
やはり、お前はまだ小さいからね、と、母親が言った。
「ごちそうさま」
眠くもなかったが、あくびがひとつ出た。母親は、もう寝るようにと少年を促した。
布団の上に横になって、少年は傍らの母親に向かって言った。
「ね、この世界の果てには何があるのかなあ?」
母親は笑っていた。そうね。何があるのかしらね・・・と、言いながら-。
夢のなかでは、さざ波の音がした。少年は船のデッキに立って、沈む夕陽を見つめていた。
水平線の彼方に、夕陽は消えてゆく。あれは世界の果て。
船は今、そこへ向かって進んでいる。
--この世界の果てには、一体何があるのだろう?
すると、少年の心の中で、誰かの声がした。
--この世界に果てなどあるものか! お前の船は、永久に水平線へはたどり着けない。
しかし、少年はそうは思わなかった。
--行ってみなければわかるものか!
また、声がした。
--行ってみたところで、お前は途中で疲れ果て、死ぬだろう。
少年は、その言葉に少し迷ったが、
--それでもぼくは行ってみたい!
そう思った。
いつかは、誰もが皆、死んでしまう。生きているうちにこそ、本当にやりたいことを見つけ、それをやり遂げるべきなんだと。そしてその結果に死んだなら、きっと誰よりも幸せに違いないと。
しかし、少年はそう思ってみたものの、本当にそれが正しいのかどうかは、よくわからなかった。
--大きくなれば、きっとよくわかるようになるさ。
と、声が言った。
船は、航海を続けている。
世界の果てへ向かって、
水平線の彼方、
空と海の交わる彼方目指して、
少年は夢の旅を続けている。
いつか、目が醒めるまで・・・。
ひとつの想い ある☆ふぁるど @ryuetto23
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