第3話

なめらかな光の射し込む世界で、彼は”えさ”を食べていた。彼は長い間この世界に住み、同じ”えさ”を食べ、同じ”敵”を怖れ、暮らしてきた。

彼は、よく天上を見上げた。明るくもなく、暗くもない、穏やかな光がそこから射していた。彼はこの光が好きだったし、この世界にも満足していた。単調で、変化の少ない光のなかで、いつもと同じ食事、いつもと同じ生活。時に”敵”に脅かされはしても・・・。

だが、その”えさ”を食べたとき、彼の中の何かが変化した。

彼は天上を見上げた。いつもと同じ行為、いつもと同じ習慣だった。なのに・・・。

--天上の彼方・・。そうだ、あの向こうには何があるのだろう?

それは、彼が今まで考えもしなかった想いだった。そして、その想いは、彼の中にとりつき、彼を捕らえて離れなかった。

--いつも差し込むこの光は、一体どこから来るのだろう?

想いは広がり、どんどん大きくなっていった。

--知りたい・・。この世界の果てに何があるのか・・・。

--果てなどない。それを考えるのは、意味のないことだ。

--何故わかる? 行ってみなければわからないじゃないか。

--お前は、今の暮らしを続けていればいい。その方が幸せなのだ。この世界から離れれば、お前は死を迎えるしかない。

満ち足りた今の生活を捨てるだけのものがあるのだろうか?


--行きたいんだ・・・。

--やめろ! 無駄なことを考えるな!

--行きたいんだ!

彼は、空中へ舞い上がった。初めてやってみたことだったが、体は軽く、気持ちがよかった。光は、彼を受け入れ、導くかのようにキラキラと輝いていた。

彼は飛んだ。天上へ向かって・・。果てへ向かって・・。高く・・高く・・・。

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