第2話

彼は”えさ”を食べていた。彼の周りを時折うろつく小さな生き物。--それが、彼の”えさ”だった。彼は、ずっと昔からそうやって生きてきた。誰に教わったわけでもなく・・・。

その”えさ”を食べたとき、彼は、今まで考えもしなかった想いに捕らわれた。

--天上の、この世界の果てには、一体、何があるのだろう?

彼は、自分の周りを見回した。ほとんど光の射すことのない、薄暗い空間がそこにはあった。この場所で彼は、”敵”を恐れ、”えさ”を食べながら生きてきたのだ。彼は、この世界に満足していたはずだった。それなのに、突然起こったこの想いは、ゆっくりと、だが確実に、彼の中で大きくなっていった。

--行きたい! 行って確かめてみたい! この世界の果て、天上の彼方に何があるのか・・・。

--それはダメだ。この世界から離れれば、お前は死を迎えるしかない。

声が言った。

--なぜ? どうしてそれがわかる?

--この世界に果てなどないからだ。それを考えるのは無意味なことなのだ。

--でも・・・行ってみなければわからない。

--やめろ! 行かない方がいい!

--行きたいんだ!

彼は空中に舞い上がった。声がまだ何かを叫んでいたが、彼はそれを無視した。そして、そのまま飛び続けた。天上へ向かって、高く・・高く・・。

何か大きなものが近づいていた。彼には、それが何であるのかすぐにわかった。

”敵”だ--!

彼は、逃げた。必死で逃げた。それでも、彼は方向を変えたりはしなかった。天上へ・・・天上へ・・・彼は向かっていたのである。しかし、とても逃げ切れるものではなかった。彼は疲れていた。

・・・ダメだ。追いつかれる・・・。

”敵”は、彼のすぐ後方まで迫ってきていた。

--この世界から離れれば、お前は死を迎えるだけだと、あれほど言ったのに・・・。

声が、再び聞こえた。

--でも、見たかったんだ。

彼は天上を見上げた。広がる世界は、まるで変わっていなかった。

--あの天上の果てに何があるのか・・・。

彼の意識は消えた。彼の想いもまた消えていった・・・。

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