第10話 未来の場合5
久しぶりにあった
友加里さんは
痩せこけていた
彼からわたしに友加里さんのことを
聞いて彼の職場から離れてから
久しぶりに行くことにした
彼はわたしのお腹を見て
「僕も産まれてくる子の父親だから協力したいんだ」
そう告げられたけど
「1人で育てるから大丈夫」
悲しげな彼の顔を横目に
友加里さんが
声にならない声で
誰かの名前を呼ぼうとしていた
友加里さんがかすれた小さい声で
「健二さん……」
そう彼に向かって言うと
彼がハッとした顔をする……
「友加里さん……あなたが祖父が愛していた人なんですね……」
彼がわたしに話をしてくれる
数年前に亡くなった祖父から
亡くなる前に
突然孫である彼に話をしたことがあった
かつて祖母と結婚する前に
好きだった相手がいたこと
彼女には夫も子もいたが
愛してしまったこと
そのせいで彼女の人生を
狂わせてしまったのに
親からの猛反対で
別れされられ
祖母と無理やり結婚させられたこと
祖母にはそんな事情も話せなかったので
ずっと自分の気持ちを隠していたが
きっと気付いていたのだろう
ということ
どちらにも
悲しい想いをさせてしまったと
亡くなる数日前に
祖父は
泣きながら話をしていたことを
彼が話をしてくれた
数奇な運命を感じてしまった
彼の祖父が引き合わせたのだろうか
友加里さんに
笑顔で話をする
「あなたの愛した人はずっとあなたのこと忘れてなかった。良かったですね。」
そういうと
友加里さんに聞こえたのか
目を開けてにっこり
微笑んで
また静かに目を閉じた
そこからは
友加里さんは
二度と目を開けることがなかった
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