第45話 帰京

「君には本当に世話になった。面倒に巻き込んで本当にすまないと思っている」

「岸川さん、たったひとりでどうするつもりなんですか」山崎は東京に戻る岸川を心配していた。

「この事件を解決する鍵は東京にあると確信があるんだ。だからどうしても戻る必要がある」「今回は助かりましたが、また必ず命を狙われますよ」

「結局、どこにいても危険なことは同じだ。この事件の鍵を握る人物と対峙しないかぎり、真相はどこまでいっても闇のままだ」

「とにかく気をつけてくださいよ。手助けがほしい時は連絡をください」山崎はレンタカーの鍵を手渡しながら言った。岸川はその手をしっかりと握りしめた。神戸から東京まで深夜の高速道路をひた走った。

 途中睡魔に襲われそうになった時はサービスエリアで短時間の休憩を取った。深夜のサービスエリアは大型トラックばかりだった。東京にいる鍵の握る人物とは、畠山分家の当主畠山義継だった。ネットで調べてみたが、生死が分からなかった。生きていれば相当の高齢のはずだった。この男は畠山家で起きた事件とそれにつながる権藤家の事件の犯人について知っているという確信があった。

 東京に近づくにつれて、緊張と興奮で睡魔は消えていた。岸川は首都高の新宿出口で降りると新宿駅西口の地下駐車場に車を停めた。誰が信用できるかと考えた時に思い浮かんだ人間はひとりだけだった。

 

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