第42話 真実への道

 岸川と山崎はビジネスホテルに一室にいた。疲れ切っていた山崎はツインルームのベットで死んだように寝ていた。岸川も疲労困憊状態だったが、神経が異常に高ぶっていて眠れなかった。狭い部屋の窓際に置かれたテーブルに死んだ男から奪った物を並べてみた。

 マルボロの煙草とデュポンのライター、ダンヒルの長財布、表装が革製の手帳、そしてグロック17自動拳銃が持ち物のすべてだった。持ち物はすべて高級な物だった。

 この男の雇い主は相当な資産家に違いなかった。最初に手帳を見た。雇い主に直接つながる情報があるかもしれないと思ったからだ。確かに手帳には多数の書き込みがあったが、部外者が見ても分からないような工夫がされていた。

 数字と記号の羅列がずらりと並んでいた。言葉の説明は一切無かった。この数字と記号が事件の核心に近づく重要なものだという確信があったが、それが何を意味するのかは皆目分からなかった。日時、場所、電話番号など思いつくものを次々にあてはめてみたが、すべて空振りだった。

 暗号の可能性も考えられたが、岸川にはその知識がまったく無かった。岸川は使い古したバックから捜査ノートを取り出すと過去から現在にいたるまでのさまざまな殺人事件の概要を読み直した。注目したのは、権藤祐三とその妻由紀子の事件だった。由紀子の切り取られた舌には数字か記号か判読不明な物が刻まれていた。数字と記号が何を指し示しているのか。この謎を解くにはもう一度危ない橋を渡る必要があった。

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