第21話 追跡
「頼まれていたことメモにしたわ」角田に岸川が襲われた日の警察官の勤務状況を調べてもらっていた。岸川刑事は角田が差し出したメモに目を凝らした。
「一体、何を調べているの」「ああ、ちょっと気になることがあって」
「手伝ったんだから、今度、ご馳走してね」「分かった。必ずだ。約束するよ」
「岸川刑事の必ずはいつになるのやら」そう言うと角田は笑みを浮かべた。
「捜査の邪魔しちゃ悪いからもう行くわ」角田はゆっくりと刑事部屋から出て行った。岸川刑事は外勤に出ていた警察官と休暇を取っていた警察官の名前にアンダーラインを引いた。該当する警察官は5人いた。名前を記憶するとメモをシュレッダーにかけた。この5人を一人ずつ徹底的に調べてやると岸川刑事は呟いた。メモにあった名前を調べ始めて一週間が経った。
尾行していたターゲットを突然見失ったことで男は少なからず動揺していた。おかしい一体どこに行ったんだ。歩を進めようとしたその瞬間、首筋を物凄い力で引っ張られた。体勢を立て直そうと振り向くと同時に腹に強烈なパンチが飛んできた。男は苦悶の声を上げるとその場に膝から崩れ落ちた。
「お前だったのか。一体誰に頼まれた」岸川刑事は暴力団担当の大山刑事の良くない噂を以前から耳にしていた。
「いきなり殴っておいてなんだ」「なぜ俺を尾行している」大山刑事は反撃しようと立ち上がったが、岸川刑事にネクタイごと締め上げられて抵抗出来なかった。「その手を離せ」「誰に頼まれたか白状すれば自由にしてやる」
「お前はやばいことになっているぞ」「やばいのはお前だ。俺を駅のホームから突き落としたのはお前なんだろう」「一体、何の話をしている。俺がお前を殺すようなことをするわけがないだろう」「暴力団に頼まれてやったのか」
「本当にお前は能天気な野郎だな。俺がお前は尾行しているのは内務調査班の連中に依頼されたからだ」岸川刑事は己の耳を疑った。
「なぜ内務調査班が俺を調べているんだ」「そんなこと俺が知っているわけないだろう。自分の胸に聞いてみろ」岸川刑事は内務調査班が自ら動かずに大山刑事を使っていることが解せなかった。
「内務調査班の誰に頼まれんだ」「それを言ったら、俺は警察に居られなくなる」岸川は大山が内務調査班の調査対象になっていて、脅されていると直感した。「いつから尾行しているんだ」「2週間前からだ」警察内部に裏切り者がいることは間違いないが、まさか内務調査班が動いているとは思ってもいなかった。
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