第22話 混乱
大山刑事の話は岸川刑事の頭を混乱させた。大山刑事は暴力団との金銭的繋がりをネタに尾行を強要されたと証言した。暴力団担当の大山刑事が震え上がるほどの脅迫で拒否することなど出来なかったらしい。
最初の接触は職場にかかってきた電話だった。男は内務調査班の生沼と名乗った。生沼は大山刑事がギャンブルの借金を暴力団に肩代わりしてもらっている事実をつかんでいると言われたという。
岸川が奇異に思ったのは、大山刑事は一度も生沼に会ったことが無く、指示はすべてメールだったということだ。脅されていた大山刑事は不思議だとは思わなかったと言った。岸川刑事はメールの発信元を調べるために再びサイバー犯罪捜査班の山口刑事に電話した。
「岸川、今度は何の頼みなんだ」「またメールの送信元を調べて欲しい。今度のはちょっと難しいかもしれない」「どういうことだ」「内務調査班が絡んでいる」「お前が調査対象になっているのか」「俺が不正に関わっていると思うか」「お前に限っては無いな」山口刑事は電話の向こうで笑いながら言った。
「俺のまわりでおかしなことが起こっている。内務調査班に生沼という男がいるか調べることが出来ないか」沈黙が続いた後で山口刑事はようやく答えた。
「内務調査班に知っている奴がいるが、連中は口がかたい。下手に近づくと俺の立場も危うくなる」岸川刑事は山口刑事の懸念を理解した上で、高井戸駅のホーム下に突き落とされたことを話した。
「岸川、この事件は本当にやばいぞ。信頼のおける上司に報告すべきだ」
「今は、誰を信用していいか分からない。お前に迷惑をかけたくない。生沼の件は忘れてくれ。メールの送信元を調べてくれるだけでいい」
「わかった。すぐに調べてみる。岸川、気をつけろよ」
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