ヤマト国のヒメミコ
森の中に
その赤みがかる空に向かって、
「傷が癒えるまでは一緒にここに居るよ!」
「あなた方、用事、大丈夫なのか?」
「ああ。今、
スセリは
魚と木の実をいつの間にか焚き火の横に用意しており、野宿の準備はすでに出来ている。
「あの子、さっきから何してる?」
「ああ…トヨは
「
「
チョウの視線の先には、10歳位の
「さっき倒した
チョウは先ほど闘った怪物の顔を思い返していた。
凄い
もし自分の死んだ部下達が、あの怪物に変えられたならば…
考えただけでも怒りが込み上げて来る。
「チョウはどこ行くつもりだったんだ?」
「本当、内緒。ヤマタイ国のヒミコ女王、会いに行く所だった」
「ヤマタイ国のヒミコ女王?誰それ?」
「えっ?知らないか?魏と交流有る倭の女王…」
「あれー?!チョウもヤマトの国に行く所だったのか。ちょうどいいや一緒に行こう!」
「ヤマト?あっ!ヤマト読むか…」
チョウは何かの皮でできた巻物を広げた。
文字がびっしり書かれてある。
「あっ!これ漢字か?チョウ漢字読めるんだ?!いいなー…」
「いや…一応自国の字だから…私、記録とるのも仕事」
「あっ!だったらヒミコ女王はおかしいぞ。
「ヒミコ名前違うか?!知らなかった。謝謝」
「
「ほう…」
「だから私もトヨも
「女性、不思議力使える人多いか?」
「そうだな。
「あの子か…確かに凄い…貴方も」
「私は凄く無い…だって私はあの……」
スセリの顔が急に暗く成った。
チョウと合わせていた目線を外し、俯きながら焚き火に薪をくべりだした。
〝パチッ…パチ〟
火の粉を見ながら思い暮れている。
チョウは何かまずいこと言ってしまったかと思い、話題を変えた。
「あの子、スセリ妹か?」
「…ん?あっ!トヨか?妹みたいなもんだ」
「姉妹違うか…」
「ああ…
「何か有った?」
「トヨは貧しい村の子で、その年は村全体で作物が何も獲れず、トヨの家族はそのままじゃ全員餓死するしか無かったんだ…」
「捨てられたか?」
「違う…トヨは自分の意思で口減らしの為に家を出たんだ」
「アイヤ!あの歳、なのに自分でか?」
「ああ…だけど悲惨なのはその後…家族を助けようとして家を出たのに、トヨが家を出て間もなく、家族は親も兄弟も全員通りがかりの呪術者に殺された…」
「…何たる…惨い」
「家を出たトヨは
「あの子の目…生気無い意味分かった…」
「自分が家を出なければ、自分の
「そうだったか…気の毒な子…あの背中の布はスセリのか?」
「そうだ。気に入ってくれて、ずっと付けている。いくら
「あの子連れてヤマト国行く理由何だ?」
「ヤマトの国に私が慕っているウズメって人が居る。その人に話したらヒメミコに伝えてくれて、トヨを養女にしたいとの事なんだ」
「えっ?!ヒミコの養女!良かったじゃ無いか!ヒミコ子供が無い聞く。ちょうど良い」
「ん?ん…うん…そ、そうだな…」
急にスセリが戸惑い顔をみせた。
明らかに今、何かを思案して言葉を選んでいた。
「どうした?ヒミコの養女余り良くないか?」
「いや…その…そうか、内緒なんだ…いや!ヒメミコの養女になること凄く良いことだよ!うん」
「スセリ、何か隠してるな?」
「いや…な、何も…それよりチョウも
「ん?ああ私のは仙術。私、
「へぇー…普通の人よりも傷の治りが早いのはその為か?」
「ああ…」
チョウのあらぬ方向に折り曲がっていた両足は、普通の方向に戻っていた。
トヨの治療も有るが、チョウ自身の力も加わっている。
「私言う〝
「ふーん…チョウは色々知ってるんだな…」
「いや、あなたも…おおっ!!」
いつの間にかチョウの傍らにトヨがボォーとしながら浮いていた。
音も無く近づくので全く気付かず、一瞬幽霊かと思ってチョウは驚いてしまった。
「ョッ…これ…」
トヨがチョウに何かが入った小袋を差し出した。
チョウは受け取り、中を確認する。
袋からは沢山の小石が出て来た…
「これは?」
「石にお友達の
「感謝…とても感謝…」
チョウは深くトヨに頭を下げた…
いつの間にか日は暮れていた。
草むらを賑やかす
どこかでカジカ蛙の合唱も始まっていた。
夜の森は色んな生き物の声が響きだす。
だが中には生き物で無い声も混ざり込む場合が有る…
スセリはいち早く其れに気付き、その声が自分達から遠ざかって行くのをしっかりと確認していた…
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