第十二章 ジャングルの黄色い果実
朝、まっさきに目が覚めたのは姫だった。
「ここはどこですの……?」
眠い目をこすりながら、辺りを見回す。
文鳥のさえずりと、髪が靡くくらいの風がとても心地よかった。そうしている間にオカンが目を覚ました。
「おはようさん」
「あらごきげんよう。ここは一体?」
「ああ、廃村は抜けたから安心しーや。ここは洞穴や、勇者がここ迄運んでくれたんやで」
「そのニヤつき顔はなんですの……」
「ええ〜?なんでもあらへんがな〜、ちょっと周り何があるかみてくるわ」
オカンのニヤニヤが少し気持ち悪かったが、勇者に少し申し訳ない気持ちになった。勇者はまだすやすやと寝息を立てている。
「か、風邪を引きますわ!」
姫は自分のマントを勇者に被せた。そして
「これはほんのお詫びですの。お礼なんて言いませんわ。」などと姫がブツブツ呟くのを、姫に分からないように師長とアスカが横目でクスクスと笑っていた。
「ジャングルがあったで〜」
周辺を探索していたオカンが戻ってくる頃には、もうみんな起きていた。
師長「ジャングルか……もしかしたら木の実なんかがあるかもしれないね」
勇者「おお、じゃあ行ってみるか!」
***
師長「おお、だいぶ生い茂ってるね」
オカンの案内を頼りに、一行は無事にジャングルに辿り着いた。
「ここからなんか入れそうや。道みたいになってるねん。奥まで続いてるわ」
アスカ「ほんとですね。行ってみますか」
そうしてジャングルに足を踏み入れた。地
面は木の根っこがびっしりと張り付き、落ち葉が土を隠していた。下はかなりジメジメしている。
姫「あ、何かの実がなってますわ!」
姫が立ち止まって上を見上げた。
同じところを見ると、そう高くないところに、確かに丸い何かが10個以上ついていた。
アスカ「結構デカいかも……」
勇者「オカン、たのんだ!」
オカン「はいよ!」
勢いよくオカンが飛び、木の幹に盛大な体当たりをみせる。
すると2,3個ほど落ちてきた。
姫「やりましたわ!」
黄色く、丸々とした実だった。
オカンは実を拾って、真っ二つに割った。瞬間に水分が溢れ出し、中には繊維がびっしり詰まっていた。オカンは零さないようにズズっと吸い上げる。
「うん、美味しいわ!」
オカンのグッドサインが出たところで、みんなも2つに割って2人で分けて食べてみた。
姫「あっまぁああい!!!、実自体は柔らかくて、舌でカンタンに潰れますの!」
アスカ「確かに甘い。でもちょっと酸味があって、これがまた絶妙なバランスです」
師長「こんな美味しい果物初めて食べたかもしれない。中の繊維は栄養満点だね」
勇者「うん、後味もスっとする爽快感だ。うめぇ!」
そうこう言っている間に、一行はジャングルを抜けた。
勇者「遠くに街が見える!」
姫「よし、行きますわよ!」
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