終息
自宅へと帰ってきた剣崎は、自分の部屋の窓を開けて入る。しかし、その際に足を踏み外し、顔から床へと落下してしまい、大きな音を立ててしまった。体を起こし、強打した頬を撫でながら窓際の壁に体を預け、マスクを下ろす。
「いたたた……」
深く息を吐いた後、窓を閉め、続けてカーテンを閉める。
その時だ。
リビングから慌ただしい足音が聞こえてきた。それは階段を駆け上がり、自室へと向かってくる。そして、勢いよくドアが開かれ、息を荒らした美紀が入ってきた。
「あ……お母さん」
「葵……よか――」
こちらに歩み寄り、抱きしめてこようと腕を広げてきたところで、剣崎は彼女に掌を見せて制止するように促した。
「待って……まだ傷が塞がってない……。それに、血が付いちゃうよ……」
「あ……ごめん……。じ、じゃあ何かしてほしいのはないっ!?」
「えっと……、お風呂とオレンジジュース……かな」
「分かった。すぐしてくるから」
美紀はそう言い、こちらに背を向け、部屋から出ようとする。
「お母さん」
そこで、剣崎が彼女を呼び止める。娘に呼び止められた美紀は、不安気に振り返り、首を傾げた。
「なに?」
「街……護ってきたよ……」
ピースサインをし、笑みを浮かべて見せた。それを見た彼女は、僅かに目を見開かせた後、目を細め、涙を溜めながら頷いた。
「うん……ありがとう、葵」
部屋を出て行った美紀を見送った剣崎は、手を下ろし、目を閉じる。
緊張が切れた途端、睡魔に襲われた。起きていようと思ったのだが、瞼はそれを許さず、強引に視界を塞いでしまう。
(まぁ……いいや……)
漸く纏わりついていた脅威が無くなり、心の底からホッとする。
今日は良い夢が見れそうだ、と剣崎は思いながら意識をどこかへと離した。
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