僕と彼女

yoko

本編

 僕は本当に臆病者だ。

 自分の臆病さに辟易することさえある。

 引き金のような言葉を耳にすると、すぐ別の考えに逃避する。

 そう。「無かったこと」にしてしまえ。

 今になって始まったことではない。

 ずいぶん前から長い付き合いだ。


 僕が書き残そうと思った大きな原因が、やがてくる“卒業”だ。

 この日を境に、失うものがある。

 だから、この日が来てほしくないのだ。


 僕には、大切にしている人がいる。

 この人には数えてもキリがないほど、助けられてきた。

 僕をここまでの何者かにしてくれたのは、彼女のおかけだ。

 いつかの日、友達と日が暮れるまで遊び、家に帰って門限を守れと言われたあの頃と比べたら、格段と成長させてくれた。


 僕は、そんな彼女に恋をしていたのかもしれない。

 いつかの小説で読んだ、淡い恋心。

 いいや、そんな言葉は、少なくとも僕には向いていない。

 ありきたりな言葉で表現できる関係じゃない。

 僕たちは、美しい結末を迎える2人のような恋人ではないのだ。




 こんな僕だけれど、以外な一面もある。

 人の話を聞いて、解決策を提案できるところだ。

 自分で評価するのもアレだけど、人並み以上に提案はできるはずだ。

 この一面を活用し、何度か彼女を助けたことがある。

 問題には必ず解決の緒がある。


 僕は、自分に都合の悪いことには耳をふさぎ、右から左へと受け流す臆病者だ。

 そんな臆病者にでも、臆病者らしく今までの恩を返そうと思う。


 きっとできるはずだ、と僕は今までで一番、自分を応援する計画を立てながら、彼女が着くべき席を眺めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と彼女 yoko @yoko_yy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ