第三節
「――ふぅ」
中に入り、スロープの先にある、ぼんやりとオレンジ色に照らされたエレベーターホールを眺めて小さく息を吐いた。
毎日のように訪れている場所。
そのはずなのに、慣れる事のない異様な雰囲気に息が詰まる。
暗いという事を売りにしているのか……。
とにかく薄気味悪い印象しかない。
それに……。
……駄目だ……仕事しろ……仕事だ……仕事。
ドアが閉まるのを横目で確認すると、不快感が強くなっているのを覚えながら、スロープを上り始めた。
ゆっくりと。
意識せず。
いつものように。
そして……。
……考えるな……考えるな……考えるな。
一歩一歩踏み出す毎に、憂鬱な気持ちが募る。
エレベーターホールが近づくにつれて、確実に……。
……あの顔が……。
エレベーターホールに倒れている。
俯せに。
エレベーターのドアに。
手を。
掌を。
押しつけて。
傍に寄ると。
そして……。
……いつもいつもいつもいつもいつも……。
鮮明に……。
目に焼き付いて離れない光景。
ほぼ毎日のように。
絶対に……。
思い出される。
「いつも……」
エレベーターホールに着くと、床から目を離さずに、そう呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます