僕は美香を連れ、学校を出た。それと同時に雨がザーザーと本格的に降ってきたのだ。この状況を悪化させるように勢いよく降っている。

「うわあ、降ってきたのかよ。」

僕は慌てて美香の手を引き、走って学校に戻る。

「美香、傘持ってねえか?」

美香は意識が戻ったのか、僕を見上げて、目をまん丸くさせた。

「あ、、手。。」美香の頬が少し赤らんだ。

「あ、わりい。」

なんでこいつ赤らんでるんだ?少し疑問に思ったが、

僕は強く握っていた美香の手をゆっくり離した。

「あ、、えっと折りたたみなら持ってるよ。。」

そう言って。ガサゴソと自分のカバンを漁る。

「あ、あった。」

そう言って取り出したのは、花柄模様がかわいい美香らしい傘だった。

「おし、じゃあ、傘さして帰ろうか。」

「うん。」美香の声は落ち着いていた。

傘を広げると華やかな花柄の模様が暗い景色に色を差す。

美香の肩を濡らさぬように傘を美香のほうに傾ける。僕らはゆっくりと

歩調を合わせる。

「あ、自転車、どうしよ。」

「いいだろ?今日くらいさ。置いていっても。」

「そうだね。」

「ああ。」

美香は僕と目線を合わさずにただ真っすぐに歩いている。僕は口をゆっくりと

開いた。

「ごめん…。ごめんな。助けてやれなくて、いつもそうだ、僕は逃げてばかりだ。彩さんに助けてもらってばかりでさ。。僕は、いつも止まってばかりだ、今日だって、美香が怯えているのに僕は、、手を出されるまで、大丈夫だそう思ったんだ、。そういえば、あの時もそうだったな、美香がいじめられていたのに傍にいただけだ。。助けられなかった。彩さんに任せて、いつも自分はどこか、他人事のように思っていたんだ。。」僕は、今までの弱さを独り言のように小さく語った。

美香は黙って、立ち止まった。

「そんな、言葉、聞きたくないよ…怖くなんてなかったし、中学の時だって、彩ねえがいなくても、私は、がんばれたもん。。あの先輩だって、悪気はなかったと思うし、。」

そう言った美香の声が瞳が涙を流した。

「私は、、まこちゃんがそばにいるだけで嬉しかった、どれだけ嫌われようと、まこちゃんがいるだけで、嬉しかったんだよ。」

そう言って傘から美香は離れた。

美香の頬につたる涙が滴る雨に紛れていた。

「まこちゃんのわからずや。」

美香は、この雨の中僕にそれだけを言い残して走っていった。

僕は止めることができなかった。自分が情けなくて、仕方がなかった。

傘を閉じ、道端に咲いていた、雨に濡れたキンセンカを憎むように睨みつけた。



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