痛い

あの後、僕は雨に打たれながら、とぼとぼと帰っていった。もう、時間は6時ごろになっていた。家の前で誰かがしゃべっていた。よく見るとそこには出張から帰ってきたらしい父と美香の両親が話していた。

「誠、お前何してんだ、傘も差さずに。」

そう言って話しかけてきたのは父だった。

「どうかしたの?」僕は泣きそうな目を無理やりひっこめた。

「ああまあな。」父は低い声でそういう。

「美香がねえ、まだ帰ってこないのよ。」美香の母は心配そうに顔をしかめる。

「え?」だって美香は先に帰ったはずだ。僕より後に帰ることはないはずだ。

「誠君何か知らないか?」

「学校の近くまでは一緒でした。」

「そうかい、まあ母さんきっとあの子のことだ、どこかで寄り道でもしているんじゃないか?」美香の父は大丈夫だと美香の母の肩をとんとんとした。

「そうよねえ。」美香の母はにこりと笑った。

「すみません。お騒がせしてしまって。」

「いえいえ、大丈夫ですよ」父はえがおを向ける。

それではとお礼をして美香の両親は帰っていった。

「さあ、家に入るか、お前もびしょ濡れだしな」ははっと父は笑いながら、僕を家に連れ込む。

家に入り、シャワーを浴び、父が待っているリビングへ髪を拭きながら向かう。

「父さん帰ってきたんだね」

「ああ、ついさっきな。そこで美香ちゃんのご両親と会ってさ。」

なるほど、そういう事か。

「お前も元気そうだな。」父は酒をの見ながらスーツのままテレビを見ている。

「まあね。」僕は髪を拭きおえると自室へ戻った。

その時だ電話がかかってきたのだ、しかも携帯ではなく家電だ。

「父さんー。電話なってるー」そう言って、ゆっくりと階段を降りた。返事がなかったので、リビングへ行くとソファに横になり爆睡していた父が見えた。日頃の疲れのせいかいびきを立てて寝ている。仕方ない、僕が出よう。僕は受話器を取った。

「もしもし、どなたですか?」

「誠、あんた今から南病院に来なさい!」そう威勢を張る声は彩さんの声だった。

「なにがあったの?」ぼくは動揺しつつ訪ねた。なぜか悪寒が収まらなかった。

「美香が、、交通事故に巻き込まれたのよ!」そう言った彩さんの声が震えていた。電話の後ろからは美香の母の泣き声が聞こえた。

僕は受話器を放り投げ、裸足で南病院へ向かった。

誰よりも早く、ひたすら、裸足で走る、美香美香美香心で何回も呼び続ける。

小石が何度も何度も突き刺さる。なのに心臓が痛い、苦しい、なにかが刺さる。小石ではない何かが。

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君と僕との交差点 個性 @sakura8794

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