君を追いかける

くそくそ、どこにいんだよ。僕はそこらじゅうを走り回った。でも美香は一向に見当たらない。体育館の近くで休もうと、少し息が切れかけたその時だ、体育館の裏側から、怒鳴り声が聞こえたのだ。僕は様子を窺うように物陰に隠れた。

「あんたさ、東に告られたんだよね。」相手の声は怒りに満ち溢れいた。三年の先輩のようで、美香をギロッと睨みつけていた。

「は、はい。、」おびえた声で返事をしたのは美香のか細い声だとすぐにわかった。東ってのはあの美香に告白した先輩のことだろうか。

「昨日あんた言ったよね、好きな人がいるから振ったて。」

美香はその言葉に小さく頷いた。

「あたしさ、東にふられたんだよねえ。いやあ、別におこってるわけじゃないんだけどさあ。」

そう言った先輩の人は美香を嘲るように笑う。

「そう、、ですか。」美香はカバンをぎゅっと掴んでいる。震えているんのが分かりやすい。

「あんたさ、確かにかわいいけどさあ。かわいいからってさ、あんま調子乗るんじゃないわよ。」そう言って、先輩は美香に近づいていく。

美香は怯えにおびえていた。

「そうやって、かわいこぶってさ、ずるいのよっ!」先輩が手のひらを勢いよく美香に向けた。

やばいと僕は物陰から出ようとしたその時だ。

「何をしているの?」彩さんだった。彩さんはその先輩の手をガシッと受け止めていた。

「なによ、彩。」涙目になりながらその先輩は彩さんに反論する。

「私の大切な家族に手を上げないで。」そう言って、彩さんはその先輩の手を強く握りしめていた。

「あたし、別に、、そんなつもりじゃなくて、。」はっと目が覚めたようにその先輩は涙をほっろと流す。

「好きな人が自分以外を好きになるのは嫌だったのよね。」

涙を流す先輩にやさしく声をかける。

「でもね、いくら辛くても人に当たるのは違うのよ。あなたは頑張って告白したそれだけでいいじゃない。気持ちを伝えられたのよ。それだけで、十分よ。たくさん努力をしてきたんでしょう?今のあなたを見たら彼はもっと離れていくわよ。」

彩さんがそう言うとその先輩は彩さんに抱き着き小さい子が鳴くようにわんわんと喚きながら嗚咽を漏らしていた。

「誠、美香と帰ってあげて。」気づかれていたようだった。

立ちすくんでいた僕に口パクで頑張ったわねっと言っていた。

「ああ。」

僕はその場で座りこんでいた美香に声をかけた。

「かえるか。」

「うん。。」

軽く放心状態の美香の手を握った。強く強く握った。

離れてしまわぬように。


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