好きな人

目覚めるときにはもう朝だった。あれから疲労が一気に来たようで、ぐっすりと深い眠りに浸っていた。制服を着たまま寝たようでブレザーが少しきしんでいた。

ああ、やちまった。ふわあとあくびをしながら階段を降りる。リビングの時計を、見ると朝の6時だ。こんな時間に起きるの久々だなあ。カーテンを開け日差しを迎える。父さんは出張に行ったらしい。置手紙がテーブルに置いてあった。

「顔でも洗うか、」

洗面所に向かうと自分の寝癖が大変なことになっていた。

「こりゃ。やべえな」

一人でに笑いながら顔を洗い髪を整えた。美香が来るのは7時半頃だ。それまでゆっくりしておくか。リビングに戻りテレビをつけソファに腰かけた。アイツ、来るかな。そうやって、テレビを見ていくうちに時間は過ぎあっという間に7時半になった。そろそろかな。ガチャっと玄関のドアが開く音がした。

美香は僕の家の合いかぎを持っており、いつでも入り放題なのだ。

「よいしょ。」っという掛け声が聞こえる。

足音がリビングに近づく。ちょっと驚かしてみるか。僕は立ち上がり、すぐドアの近くに身を忍ばせた。引きドアなので間違っても僕には当たらない。

「朝ごはんは何にしようかなあ~」っと鼻歌を歌いながら美香が近づいてくる。

吞気な奴め。見てろよ。美香がドアノブを引く、それと同時に僕は身を乗り出した。

「よっ!」

「うわああ」いい反応だ。ビビりな美香はしりもちをついた。

「まこちゃん、起きてたの!?」美香はゆっくりと立ち上がり胸を押さえながら目をまん丸くしている。

「まあな。」僕は決め顔をしながら自信ありげにそういった。

「ふう、とりあえず朝ごはん作るね。」

と言って美香は台所へ向かった。

「おう。あ、あのさ。」

「ん?」エプロンのひもを括りながら僕の目を見つめてきた。

「お前って好きな人いんの?」

自分で思ってもいないことが無意識に言葉に出てしまった。

「え、、」美香の手は括りつけたエプロンの紐を離した。

「あ、いや、」

僕も自分で自分の言ったことに驚いている。

「やっぱり、あの時聞いてたの?」

僕は黙る。

「やっぱり聞いてたんだ。。」

美香は少し照れたように、顔をうつむかせる。 

沈黙がしばらく続いた。美香が口を動かした。

「い、いるよ…。」

そう言った美香の小さな声はこの静かな空間で響き渡る。

僕の心臓がチクリと針を刺されたように痛くなる。

「そうか。。」

僕はその言葉しか出てこなかった、。

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