7、一線
俺たちが学校跡地付近に来ると、至る所から敵が沸いてくる。数的にはこっちが有利なはずだったが、殺意を持った人間の対処に人員を割かなくてはならず、学校付近に到着した時にはホワイトナイツは100人ほどになっていた。
「こいつら本当に何人いるんだよ。」
次々に襲い掛かる不良集団。俺は竹刀で応戦するが、一向に数が減らない。
「ユウキさん、ここは私が引き受けます。先に。」
慣れた手つきでマシンガンを乱射する。対人戦に関してはサバゲー経験者のウミのほうが俺よりはるかに慣れていると思う。
「ありがとう。無理はするなよ。」
着実に学校の正門に近づいている。門まであと数メートル。
「お、やっと来たよ。暴れられなくて頭がおかしくなりそうだった。」
学校の正門付近で大きな斧を持った男が立ってこっちに笑いかけている。俺はこいつを見たことがある。初めてダンジョンに行った帰り、食料を奪われた連中の中にいた。
「クレイジーイーターか。」
「あらあら、俺たちって有名人じゃん!俺の名前はハチ。覚えなくていいから楽しく遊ぼうぜ。」
ハチは他のホワイトナイツには目もくれず俺に斬りかかってきた。それは、遊びという次元ではなく、その斧が当たれば体が上と下に別れるほどの全力のものだった。間一髪俺は交わしたが、持ってきた竹刀と、木刀では斧に対抗するのは難しい。
「俺さ、地上に居たころは退屈でさ、渋谷に行ってはその辺のおっさん殴りまくってたんだけど、ここに来てからはもう最高だよ、人を殺しても、誰も裁けない、力こそが正義なんだから。」
俺は斧を避けるので精いっぱいだった。当たれば死ぬ斧、竹刀で受ければ竹刀が壊れるだろう。念のため持ってきていた俺の相棒の刀はあるが、俺にはできない。
「おいおい避けてばっかりじゃつまらないんだけど。」
斧に気を取られていた俺は、ハチの蹴りに反応が出来なかった。
「ゲホッ」
地面に倒れこんだ、このままではまずい。
「遅くなりました。ユウキさん大丈夫ですか?」
「あれ?その子って、アキハバラNineのウミじゃね?うわ、マジか、当たり引いた!ねえウミちゃん。俺たちのチーム来なよ。可愛がってあげるからさ。まあ入っても入らなくても可愛がってあげるんだけどね。」
ウミが撃つマシンガンに怯むことなくハチはウミに近づく。
「アイドルと遊べるなんて最高だわ。」
ハチがウミを触ろうとしたとき俺の中の何かがはじけた気がした。気付いた時にはハチの右手が地面に転がっていた。
「え?え?あれ?俺の手は?おい、待てよ。殺すのは好きだけど殺されるのは聞いてなよ。俺は痛いのが嫌いなんだよ。」
子供のような反応で駄々をこねるハチ。俺はすぐに救護班を呼び。ハチを拘束し手当てをした。
「ウミごめん。大丈夫?」
目の前で人の手を切り落とした罪悪感と何より、ウミが怯えてるのではないかというのが心配だった。しかしウミは変わらぬ顔で俺に微笑んでくれた。
「ありがとうございます。でもまだ終わってないですよ。血は見たくはないですが、この先はいろいろ覚悟しないとですね。」
「ああ、行こう。」
ついに学校内に足を踏み入れた。
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