5、決断と先へ

答えが出ぬままただ銃を見つめる時間が流れた。


「はやくはやく。」


電脳シータを助けるにはここで引き金を引き内部に案内してもらうことが作戦の要。そしてこいつはただの不良、目を撃たれて当然の行いをしている不良。・・・・目撃たれて当然の人間なんていない。俺はヒーローになりたかった。ここで引き金を引くことがヒーローなんかじゃない。気付いたら俺は赤髪の男を殴り飛ばしてい

た。


「小次郎さん!!」


長谷川警部の声に我に返った。その時の元自衛隊員小島さんの動きは早かった。迅速に赤髪の口と手足を縛り、誰もいない物陰のごみ捨てようのBOXの中に閉じ込めた。


「なんとなく小次郎さんならそうするだろうと思って、動く準備をしてました。」


とさわやかに小島さんは笑った。


「あの、ありがとうございます。自分カズって言います。」


不良男は見た目とは相反し丁寧にお礼とあいさつをしてくれた。本当に引き金を引かなくてよかった。


「カズ。ちょっと頼みがあるんだけど聞いてくれるか?」

「はい、命の恩人っスから何でも聞いてください。」


俺たちはカズが信用できると判断し、事情を説明した。


「なるほどっスね。確かに兄さんたちの考えている通り、ここの末広町駅一体はクレイジーイーターの縄張りっスけど全員が仲間ってわけじゃなくて、半グレ連中は秋葉原に馴染めずにさまよっていてたまたまここに行きついただけで、ここにいる半数はクレイジーイーターとは無関係に暮らしているだけっスよ。俺が知る限りクレイジーイーターは100人程度、その中でも幹部呼ばれる連中は4人。そこに各々仲間をとってる感じっス。」

「なるほど。そいつらが居そうなところってわかるか?」

「おそらくこの末広町駅からさらに進んで外神田付近に学校跡地があるんスけどそこを縄張りにしてるって聞いたことあるっス。」

「そうか、ありがとう。」

「俺に手伝えることは?」

「もう十分だよ。あれだけ殴られたんだ。ゆっくり休みな。あとこれ、よかったら。」


俺は来る前に源さんからもらったおにぎりを分けてやった。


「ありがとうございます。どうかご無事で。」


いろいろあったが、現状把握が出来た。目指すは学校跡地。



びっくりするぐらい誰とも出くわすことなく学校跡地までたどり着いた。

ゆっくりと慎重に学校の中に入っていく。誰もいない。明らかにおかしい。学校の3階の角部屋に入ると一人の少女が椅子に座っていた。


「早く逃げてください。」


俺たちの姿を見るなり少女は叫んだ。その声と同時に校庭からすごい量の人間が学校内に入ってきた。


「遅かった・・・。」


「君が電脳シータ?」


「はい。私が電脳シータです。奴らが言ってました。侵入した奴は。私を餌におびき寄せていたぶろうって。」

「本当に悪趣味な連中だな。小島さん、みんなに連絡を。」

「今やってる。」

「さてさてこっから1時間が勝負ですよ。」


長谷川警部も臨戦態勢になる、と同時に部屋の中にナイフを持った男が数十人入ってきた。

この時の俺は本気で殺しに来る人間に対して一時間という時間がどれほどのものか想像もできていなかった。

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