4、ヒーロー

小次郎率いる潜入部隊3人が入念に打ち合わせをしている。右から小次郎さん、真ん中にいるのが長谷川警部、元自衛隊員の小島さん、3人ともでかい。180を超えるが男が3人もいると迫力が違う。作戦を再度確認し、3人は末広町駅方面へ歩いて行った。


「小次郎さん気をつけて。」

「おう。」


小次郎さんたちが無事電脳シータまで接近することができれば、ミッションはほぼ成功といえる。俺たちにできることは電脳シータの保護の合図を待つことしかない。落ち着かない時間が始まった。







ユウキ達と別れ、俺は2人と末広町駅に向かって歩いている。この緊張は、プロレスのリングに初めて上がった時と似ている気がする。体が重いような、それでいて気持ちが高ぶっている異様な感覚。思えば誰かのために戦ってことがあっただろうか?子供のころ見たヒーローになりたくて、たまたま誘われたプロレスの世界に入ってただ強くなることだけを追い求めトレーニングをして、いつしかヒーローになりたいなんて気持ち忘れていた気がする。今回の件でその気持ちを思い出せた気がする。


「小次郎さんって、大日本プロレスの小次郎選手ですよね。」

「はい。」

「僕ファンなんですよ。この前の試合も警察の同期連中と見に行きました。」

「あ、ありがとうございます。」

「5歳になる息子が居るんですけど、小次郎選手のファンで僕のヒーローだって言ってるんですよ。」

「そうですか。嬉しいな。ご家族は?」

「地上ですね。だから何としてでも上に戻る方法を探したいですね。」

「小次郎さん、長谷川さんそろそろ末広町駅付近ですよ。」


末広町駅付近に入ると情報通り不良たちが至る所におり、こっちをにらみつけている。しかし話しかけてくるものはいない。作戦通り中心部まで歩みを進めた。その時。


「あんたたち誰?」


ニターっとした笑いが不気味な赤い髪の毛の男が本物かモデルガンかわからない拳銃をこちらに突きつけ、ガムをくちゃくちゃと食べながら近づいてくる。


「仲間にして欲しいんだ。」

「へ~それであんたたちを仲間にしたときの俺たちのメリットは?」

「俺たちは強い。歯向かうものをねじ伏せる力がある。」

「いいね~いいよ。仲間になりなよ。」


ここまでは作戦通り。あとはこいつに内部まで案内してもらえれば。


「何をしてるんだ。」


思わず声が出てしまった。赤毛の男は近くにいた不良をぼこぼこに殴りこちらまでひきづってきた。


「仲間の証にこの銃でこいつのめん玉ぶち抜いてよ。」


こいつは何を言っているんだ?言っている意味が分からない。この時、ユウキから聞いていた理屈ではない人間の悪とはこういう意味なんだと実感した。


「何してんの?早く!」

「たたた、助けてくれ。俺なにもしてないだろ。」

「ちょっとおもちゃは黙っててよ。」


こいつはなにも躊躇せずまた人を殴る。俺は唇を噛みぐっと感情を抑える。


「はい、お兄さん早くこれもって。」


銃を渡され、銃を見つめる。本物か?偽物か?なんにせよこんなもので目を撃ったら失明する。どうする・・・。

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