4、帰還


戦利品をもって、武具屋まで戻ってきた。


「じいさん。戻ったぞ。」

「おお~ユウキ無事に戻ったか。よかった。」


奥のほうから姿を現すじいさん。


「おや?そちらさんは?」

「洞窟で知り合った新しい仲間だ。」

「ユウキの仲間なら、わしとも仲間だな。」

「いや、じいさんいつから俺の仲間になったんだよ?」

「お前、武器をやった恩を忘れたのか?」

「冗談だよ。」


俺とじいさんのやり取りを見てじいさんが信用できる人だとわかったのかウミはフードをとった。


「一条海です。よろしくお願いします。」

「おお~よろしくな。ウミちゃん。ワシは、飯田源次郎。源じいとか呼ばれとる。それよりもユウキ、どこでこんなベッピンさんひっかけてきた。」


どうやらじいさんはウミがアイドルということを知らないみたいだ。知らないなら言う必要もないだろう。


「それよりもじいさん戦利品だ。ケルベロスモドキの肉と、一つ目トカゲ、それと水だ。」

「おお~なかなかの量だな。待ってろ調理してやる。」

「おじいさん料理できるんですか?」

「実は若いころ、高級レストランで料理長をやっておった。任せろ。」

「おい、俺それ初耳だぞ。」

「お前には教えてないからな。」


そういって事務所の中に入っていった。俺は店内の模造刀を見て回る。


「どうしたんですか?」

「いや、もしまたあいつらに襲われた時のために人間用の武器も持たないとなと思ってさ。」

「あ、その刀って本物なんでしたっけ?」

「ああ、あのじいさんが隠し持ってた本物だよ。」

「合法で買ったもんじゃからな。」


厨房まで声が聞こえていたようでじいさんも会話に入ってくる。


「お嬢ちゃんは何か武器をいるかい?」

「いえ、私はこのガスガンがありますので。」

「本物いるかい?」

「おい、じいさんそれは違法だろ。」

「冗談じゃよ、後でそのガスガン貸してみなさい、そのモンスターとやらに効くぐらいは改造できると思うぞ。」

「お願いします。」

「さ~て出来た、出来た。」


店中にいい香りが立ち込める。


「奥に入ってきていいぞ。」


初めて入る店の奥は、店の倍以上の広さがあり、キッチンとテーブルがあった。テーブルの上にはおいしそうに盛り付けがしてあるお皿。


「ご飯がないのは残念だが、ケルベロスモドキの生姜焼きじゃ。ケルベロスモドキは少し臭みがあったので生姜で臭みを消しておいた。まあ、食べてみなさい」


俺とウミは恐る恐る生姜焼きを口に運ぶ。秋葉原が地底に沈み始めての食事。一口食べると、口いっぱいに広がる油のうまみ、本当に臭みはない、そして豚肉よりも少し歯ごたえがある肉は満腹感を出してくれる。俺よりも先に口を開いたのはウミだった。


「源じいさんこれすごくおいしいです。」

「ああ、本当においしい。」

「そうかよかったよかった。」

「あれ?でもじいさん、火はどうやって確保したんだ?ガス通ってないだろ?」

「カセットコンロがあったからな、ただこの先のことを考えると火の確保も考えんとな。」

「いろいろ必要なものが多そうだな。」

「まあそんなことより、洞窟であったことを話してくれないか?」

「ああ。」


じいさんに洞窟であったこと、洞窟であった若者4人のことを話した。


「なるほど、その若者とやらは、秋葉原が沈むのをやめた直後に秋葉原中の食料を奪ったやつらかもしれないな。」

「じいさんそんな奴らが居たのか?」

「ああ、秋葉原の情報通から聞いた話だ、間違いない。奴らは『クレイジーイーター』と名乗っているらしい。」

「もう何から考えればいいかわからないな。」

「当面は食料と水がやっぱり問題ですもんね。」

「ああ~そのことなんじゃが、つい一時間前に、3年ほど前から秋葉原を陰で仕切っていた電脳シータという人物が秋葉原計画というのを発表した。近いうちにその洞窟から水を汲み水道から水が出るようにするといっている。そして、洞窟内も秋葉原ホワイトナイツというチームを作り探索、戦利品は物々交換で売るといっておる。」

「ライフラインを復旧して経済を回そうとしてるんですね。その電脳シータってどんな方なんですか?」

「それがわからんのじゃよ。10年前に突如として現れ、秋葉原の陰に君臨するようになった人物で、ずっとパソコンでのやり取りしかないそうだ。」

「ちょっとじいさんそれおかしくないか?今は電気も通ってないだろ?」

「いや、一時間前から電気は復旧したよ。なんでも空に浮かんでいる雷光竜という光る竜を捕まえて餌をやったら電気が出来たとか。」

「雷光竜?なんだよそれ。」

「ここは地下のはずなのに日中の明るさがあるじゃろ?」

「あ、それ私もおかしいなって思ってました。」

「それを疑問に思った電脳シータが、調査をさせたら上空に無数の電光竜というのが居てそいつたちが光を出していたそうだ。」

「なるほど、すごいなその電脳シータってやつは。電脳シータはホワイトナイツの指揮で外に出てくるんだろ?」

「いや、ホワイトナイツの指揮は秋葉原東警察の警部が指揮をとることになっている。電脳シータはあくまで知識の提供だけで、どの組織にも属さないといっているらしい。」

「そうなのか。まあしばらくは街の動きを見るしかないな。」

「そうじゃな。そうだウミちゃん。そのガスガンを見せてくれるか。」

「あ、はい」

「ほう、ベレッタm9a1はなかなかいいものを使ってるな。」

「あの出来たらもう一個あるのでそれもお願いしたいんですが。」

「なんと2丁持ちか。」

「2丁持ちはすごいのか?じいさん。」

「すごいというか、ハンドガンの2丁持ちはいわばロマンじゃな。強さはサブマシンガン系のほうが圧倒的に強い。そういえばこの前のサバゲーの大会で優勝したチームに同じベレッタ2丁持ちの子が居たらしいの~。」

「・・・。」

「まさか!!君か!!」

「運がよかっただけですよ。」

「え、サバゲーが趣味って完全にビジネスサバゲーだと思ってたらウミさん本気でやってたのかよ。顔当たったらどうするんだよアイドルだろ。」

「ん?ユウキ、アイドルというのはなんじゃ?」

「あ、やべ。じいさん忘れてくれ。」

「いや気になるじゃろ、教えろユウキ。」


こうしていろいろあった秋葉原の一日目が終わった。

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