3、新たな敵
ウミはフードを被り直し、重い水の入ったトートバッグを持ち上げる。二人して重い荷物を持ち、洞窟の出口までたどり着くと、そこにはニヤニヤとした茶髪の男4人が立っていた。
「いや、ご苦労ご苦労。それじゃあその食いもの全部置いて行ってくれるか?」
何を言っているか一瞬わからなかった。みんなが大変な時に人が人に危害を加えるとは思ってもいなかった。持っていたガスガンで右足を打たれた時、初めて人間の悪というものを感じた。
「痛いでしょ?これで目ん玉撃ったらもっと痛いと思うよ」
4人が4人とも自分が悪いことをしているとは思っていないであろうニヤケ顔でガスガンを向けてくる。俺は小さい声でウミにコンタクトをとる。
「俺が合図をしたら水を捨てて走れ。」
「え?」
俺は持っていたトートバックを9つ床に置いてポケットを探った。
「おい、全部だよ、その一個も置いていきな。」
その言葉が言い終わる前に俺はポケットから棒状のものを4人の前に投げたと同時に大声で叫ぶ。
「今だ走れ。」
ウミは言われた通りトートバッグを捨てて走った。俺の投げた棒状のものからは白い煙が立ち込める。
「おい、なんだこれ」
混乱する4人組。念のため車から拝借していた発煙筒が4人を包む。
「ふざけやがって」
ガスガンを乱射する4人組。煙のおかげで当たりはしない。ウミの走った方向に俺も走った。
追いかけようとする4人組、だが煙を吸い込んでむせかえっている。戦利品を渡すのは悔しいが、もしこの娘がアイドルのウミだとばれた時のほうが怖い、今はウミを守る選択をしたかった。電気街口まで走ってくると周りに人も増えてきた。
「ここまで来たら大丈夫だろう。」
「そうですね。」
この時、改めてお互いの姿を見ると、ウミは両手にペットボトル2本、俺はトートバッグ2つを抱えていた。
「全部捨てて走れって言ったのに。」
「ユウキさんだって走りにくいのに2個も持ってるじゃないですか。」
俺たちは顔を見合わせ笑ってしまった。
「じいさんところに行くか。」
「はい。」
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