2、ダンジョン

洞窟の前に来ると少し気温が下がったように思える。唾を飲み、気合を入れて洞窟の中に入ると思ったよりも洞窟は広かった。

恐る恐る洞窟の奥へ進んでいくと道が二つに分かれていた。何か理由があったわけではないが右側を進んでみた。そこには黄色い体に目玉が1つのトカゲが!!


「キモッ」


見たこともない姿に思わず声をあげてしまった。しかし動きをみるとそこまで早くはない、

神楽耶の鞘を抜き動きを見て斬りかかる。刀の切れ味が良いのか、モンスターが弱いのかわからないが、一撃で仕留めることができた。


「やった・・・やったぞ!!」


初めての勝利に思わずガッツポーズをしていた。すぐにリュックからメロンパンを買った時のビニールを取り出し、そのモンスターを入れバックに突っ込んだ。その後、2体のトカゲ型モンスターを倒し、さらに奥に進むと、一気に拓けた場所に出た。奥には水場があった。


「水だ・・・。よかった。」


安心したのもつかの間、水場のほうから二つの顔がある大型犬がこちらに向かって走ってくる。よく見ると、フードを被った人がその犬に追われていた


「助けないと。」


その時は恐怖よりも助けなきゃという気持ちが勝っていて、右手に持った刀は先ほどよりも軽く感じた。しかし、犬が近づくにつれて助けなきゃと思ったことが後悔に変わった。その犬は2メートル近い大きさがあり、二つの頭についている口には鋭い牙、そして鋭い爪、ケルベロスってこんな感じなんだろうなと思っているとそのケルベロスモドキは襲い掛かってきた、標的を俺に移ったことで、追われていた人は助かったようだ。だけど俺は、たぶん死んだ・・・。人間はそんなに早くは動けない。気がついた時には鋭い爪が目の前にあった。その爪が俺にあたりそうになったその時、ケルベロスモドキの右頭の右目に何かが当たった。


「今です。」


可愛らしい声が響き渡った。

咄嗟に持っていた刀でケルベロスモドキに斬りかかる、この時心底、中高と剣道をやっていたことを感謝した。小手からの面の動き、最後に銅で斬りかかると、ケルベロスモドキは動かなくなった。動かなくなったことを確認した瞬間全身に脱力感が襲い、その場にしゃがみこんでしまった。


「あの、ありがとうございました。助かりました。」


可愛らしい声の人が近づいてくる、その声の正体が分かったそれは追われていたフードの人だった。その手には拳銃、いやサバイバルゲームで使われるガスガンのようなものを持っていた。


「あ、はい・・・。」


アニメの主人公であればかっこよく決めるところを、あまりの脱力感から間抜けな声で返事をしてしまった。


「あいつの目を撃ったのはあなたですか?」

「はい、サバイバルゲームは得意なんで・・・。」

「そうですか、そのおかげで命拾いしました。ありがとうございます。目を打ってくれてなかったらたぶん死んでました。」

「すいません。本当に助かりました、お怪我はないですか?」

「はい、何とか。あなたも無事でよかったです。」


フードの女の子はゆっくりとその被っていたフードをとると、黒の長い髪、白い肌が印象的な可愛い女の子が出てきた。それよりも俺は驚いたのは、たぶんこの秋葉原なら知らない人がいないであろう、アキハバラNineという国民的アイドルグループの一人だった。


「あの私、一条海って言います。」

「はい、知ってます。というかここにいる全員が多分知ってます。」

「そんなことないですよ。アイドルやっていても、秋葉原に頼れる知り合いもいないのでとりあえずここに来てみたんですが、こんなことになちゃって。」

「いや、ウミさんなら自分で動かなくても助けてくれる人がいるでしょ。」

「なんかアイドルだから助けてくれるっていうのなんか嫌なんですよね、でもアイドルとか関係なしに助けてくれる人もいるなんて、なんか嬉しいです。あの・・・こんなこと言うのは勝手かもなんですが、助けてくれとは言いません、私とパーティーを組んでくれませんか?」


この日秋葉原が地下に沈み、謎のモンスターと戦い、アイドルと仲間になった。これからどうすれば良いかわからないけど、まずはあのじいさんのところに帰ろう。


「吉永ユウキです。よろしくウミさん。」

「はい、よろしくお願いします。」

「とりあえずここから出ようか。」

「この犬どうしますか?」

「持って帰ろう、たぶん食える・・・と思う。」

「水も必要ですよね。」

「そうしたらお水は任せるから、このペットボトルにも水入れてくれる?その間にこの犬を持ち運びやすいように切り分けるから。」


俺は、武具屋のじいさんからもらった空の2リットルペットボトルの4本と小さくたたんでいたトートバッグを渡し、俺はこれもじいさんからもらった折り畳み式ナイフで、ケルベロスモドキを解体していく、どこがおいしいとかよくわからないので、とりあえずトートバッグとリュックに持てるだけ詰め込んだ。


「ユウキさんお水はオッケーです。」

「こっちも今終わった。」


お水4本はさすがに重いので俺が持とうとすると


「パーティーなんで、そういう気づかいは無用です。」


と断られた。まあ、トートバッグを両手で10個持っているのを見たらさすがにこれは私が持つしかないと思ったのかもしれないが、それでも出来た子だと思う。

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