第一章 秋葉原モンスター討伐

1、武具屋つばき

俺はその日これといった予定もなかったので、秋葉原に新刊のチェックをしに行っただけだった。毎日、大学とバイト先、家の往復で、そりゃ~非日常を望んでいなかったわけではないが、しかし、実際にこんな状況になると、話は別だ。秋葉原の街が地底に沈んだ?そんなことがあり得るのか?これが漫画だったら、主人公は特殊能力でもあって、壁を登ったりできるだろうけど、俺たちはきっと4メートルくらいから落ちても骨折するし当たり所が悪ければ死ぬ。こんなリアルで起きた漫画みたいな状況をどう対処すればいいんだろうか?とりあえず今持っている装備はリュックには食べかけの板チョコと、メロンパン、そして家から持ってきた水筒に水が入っているだけ・・・。装備弱。俺は秋葉原で唯一頼れる知り合いのじいさんの店に向かうことにした。


「おい、じいさん、生きてるか。」


「その声はユウキか?」


秋葉原電気街口から大通りを渡り高架下から細い路地にある雑居ビルの2階「武具屋つばき」俺が時々顔を出す模造刀や古式銃、西洋刀剣斧などが並ぶ店。店の奥から白ひげを蓄えたじいさんが顔を出す。


「ユウキ、なんか大変なことになってるみたいだな。」


「ああ、救助も来る気配はないし、さっき駅前で聞いたんだけど、この街には食料も水も何もないらしいんだ。」


「ああ、ワシのところにもその話は入ってきておる。じゃあこの話は知っておるか?神田方面に謎の洞窟が発見され中には食料になりそうなモンスターと、湧水があるらしいんだ。だけど不用意に立ち入った人が数名モンスターに襲われたらしい。」


「洞窟に、モンスター?ますます安物のファンタジーアニメみたいだな。やるしか、ないんだよな・・・。じいさんモンスター退治に使えそうな模造刀とかないか?」


「行くのか?そういうことなら待ってろ。」


じいさんは奥に姿を消したがすぐに1本の刀を持ってきた。


「これを持っていけ。」


「良いのか?」


「ただし、食料と水が手に入ったらワシにも分けてくれ。」


「わかった。」


俺がその刀をじいさんから受け取ろうとすると・・・重い・・・。模造刀にしては重過ぎる。


「あ、本物じゃよ」


「ほ、本物!!」


「趣味で買ったんだけど使い道がなくてな、ずっと奥に置いてあったんだ。これならモンスターと戦えるだろ。江戸時代に作られた刀で神楽耶という名前の刀じゃよ。」


「名刀神楽耶・・・ありがとうじいさん。」


「できるだけうまそうなモンスターを頼むぞ。」


「そもそもモンスターは食えるのか・・・。」


思わぬ装備を手に入れた俺は、洞窟に向かい歩き出した。

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