第38話『利用価値』

和矢は生徒会に入り、庶務の仕事を頑張った。

始めは失敗もあったが聖が


「失敗は誰でもするものだ、でもそこからどう同じ失敗をしないかを考えて行動することが大切だと分かればいいさ!」


と言って必死に仕事を和矢はしていた。

そのおかげで庶務の仕事をだいぶ慣れ、失敗が無くなり始めた頃

祐輔は


「なあ? 会長? 何であいつを庶務にしたんですか? 庶務慣れした奴を任せれば教える必要性がないのでは? それも会長が自分の仕事と両立であいつが手を付けれていない仕事までもして」


と聞いた。

聖は


「まあ、これは人に物事を教える往復練習みたいなものだよ、人間に一気に物事を教えてもすぐには吸収できないということを常に自分の中で理解し続けるのと、そのうえでどうすれば早く、そしてより多くのことを短期間で吸収することが出来るか、という利点ともしもの時にあいつをボディーガードにすること、もう一つは……」

「もう一つは?」


祐輔は聞いた。


「それは、自分の知り合いだけを優遇しないと他の生徒たちに思わせないようにすることかな?」

「ああ、そういうことか、だから留学生のマイを誘ったのか、あいつの場合は中田と違って筋がいいのと会長の洗脳のおかげでマイ自身が愛する者の言葉を覚えるという心理を利用しての言葉の理解、そして会長の教鞭のおかげで日本語への正しい使い方への誘導のおかげともいえるんですけどね、でもそれにしてもあいつより覚えるの早かったよな、鏡佳は中学の頃の一年生の人生そのものさえ操ることで昔馴染みにも優しいイメージを着かせるってことか」

「そう、それに他にも知らない人との会話を自分の馴染の友人にも関わらせることでいい関係を見せるって言う必要性もあるかな」


と祐輔の説明に一つ付け加えた。


「まあ、よくもまあ、そんなに人の利用価値を思いつくもんだな」


と呆れながら祐輔は褒めた。

続けて


「まあ、鏡佳は何で親が納得してくれたのか俺は知らないけど、それもお前なのか?」

「当たり前でしょう? あの親がお嬢様学校以外は見て目ないタイプだったけど親すらも説得する話術を磨く練習にはなったよ、あいつの親すらも私の言いなりになってるから大丈夫だよ、私が無心でお金を貰えるほどにね、およそ1億ぐらいはもらえるよ」


それを聞いて祐輔は目を輝かせ


「ちょっと頼んできてくれないか? 山分けしようぜ!」


と言ったが

聖は


「ダメだ、それだけでも洗脳は解ける可能性があるんだ、油断は禁物だよ、いずれあの会社すらも私と鏡佳の会社になるんだから」

「アンタの野望はどこまで大きいんですか……」


と呆れながら祐輔は言った。

すると聖は


「いずれ日本を取る、それが私の人生だ」

「アンタは織田信長の後継者ですか?」

「はあ? 私の血筋に織田さんの血は流れてませんが?」

「まあ、知っているけど」


とため息をつき祐輔は言った。

すると聖は


「まあ、協力すればあんたには国の隅で贅沢に暮らさせてやるよ、いい女も妻にするように計らってやるよ」

「それしか俺には楽しみがないんだがな、まあいい、いい女の子孫を残して俺の子供の未来も保障しろ」


と欲深く言った。

それを聞いて聖は


「今後の出方次第と仕事の!!」


トントン


ドアに音が鳴った。

そして


「会長! 終わりました!」

「ありがとうございます、和矢君! 今日もお疲れ様ですね!」

「ありがとうございます!」


和矢は笑顔で言った。

祐輔は


(ああ、哀れな、操られてるとも知らずに……)


と苦笑いで思った。

それを見て和矢は


「何故そんな苦笑いなんですか?」


と表情に疑問を思い聞いた。

それを聞いて


「ああ、別に、でも会長はライバルが多いから狙うのは止めといたら?」


と誤魔化した。

和矢は


「べっべつに! 俺はただ!」

「僕と言え」

「スッすみません、僕はただ、会長に出来る限りのことがしたくて」

「はいはい、そうですか」

(あぶねーなんかバレそうだった、ばれてないよな?)


と考える祐輔

聖は


「全く、祐輔、私の彼はそんな関係じゃないし、彼だって私以外の方が良いに決まってるじゃない」


と言った。

そして


(全く、私を巻き込むなよ)


とも思った。

和矢は


「そっそんなことないです!」


と大声で言った。


「もう少し静かに言いなさい!」

「ハッハイ申し訳ございません」


和矢は頭を下げながら謝罪した。

聖は誤魔化すことが出来た。


「では、僕はこれで」


そう言って和矢は挨拶をして


「はい、気負付けて帰ってくださいね」


と優しい笑顔で言った。

バタン


そして和矢が出てしばらくしてから


「ボディーガードが、これじゃお前雇った意味が減るだろうがい」


と少しキレ気味で聖は言った。

それを聞いて祐輔は


「全くだ、俺の忠告を聞かんとは」


と別の事で怒っていた。

すると


「アレ会長、まさかあいつもう帰ったんですか?」


とマイがいドアを開けると共にしゃべりかけた。


「お疲れ、マイ、でもノックは大切だからちゃんとしてね」

「もっ申し訳ございません、つい自分が入る部屋に入るみたいに! 気負付けます!」


そう言って頭を下げた。

トントン


「どうぞ」

「会長! 仕事終わりました! てかあいつまた先に帰ってませんか!」

「そう言わないであげて、彼もまだ仕事に慣れてないからあまり仕事を入れないように私がしてるんだから、あなたたちの仕事も手伝いたいけど、彼が一人前になってからにさせてもらえるかしら?」

「「当然です! それどころか仕事は自分でするべきです! あいつが甘えてるだけです!」」


と言って2人は高揚させながら言った。

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