第21話『食い止め』

「あぎああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいああああああああ!!」


奇声を上げながら猛は全力で狂ったふりを続ける。

隣で長谷川は耳を塞いだ。


(全く! 多分こいつら殺さないと狂ったふりしたところで無駄なのに! 念の為支店のか? こいつ!)


と鬱陶しそうにしていた。

そして長谷川は


「フン、まあいい! お前らはここで殺る! 行くぞ! 猛!」

「げええええええええええええええええあああああああああああああああああああああああ!!」


戦闘態勢に入った。2人を見て

和矢も戦闘態勢に入ろうとしたが


「待って! 和矢はあの主犯格を倒して! ここは私たちがやるから!」


とメリアは言った。


「でも!」

「私たちを信じて! あの主犯格を倒せばこの毒もどうにかできると思います! だから早く倒してきて!!」


とリンは猛に笑顔で言った。

すると


「俺たちもこの死刑囚共を殺すの手伝うぜ! ここは任せて先に行けってやつだ!」

「皆……」


和矢は覚悟を決めて


「分かった! 任せろ!」


と言って先に言った。

それを見て猛は


「きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


と言いながら和矢に向かって走った。

が!


「ここは行かせない!」


そう言ってリンは槍で猛を突きに言った。

猛は向上した身体能力で槍を躱した。

そして猛は


「あげええええええええええええええええええええええ!!」


と叫びながら槍を少し指で触れた。

丁度斬れる部分を触れていた。

そしてそのまま手を引いた。


「ああああ……あああああ」


猛はほくそ笑みながらリンを見ていた。

リンは不気味に感じながら


「?? いったいなぜ? どうして槍に触れた?」


と疑問を覚えた。

リンは猛の手は傷ついていると考えた。

斬れる部分を触れて少し引いたためかすり傷程度はあるのだろう

手を隠していた。


「あやややうあううあうあう」


そんな声を出しながらリンをまっすぐ見ていた。

そこがまた不気味でった。


「どうしたのリン?」

「いや、なんだか分からないけど……怖いの……でも怖気ついた怖さじゃなくて相手のペースに飲み込まれている不安があるの……」

「? ペースに飲まれてる?」


メリアはリンの言葉を聞いて苦戦することを悟った。

今まで和矢と冒険している時も一緒にいる時もリンの槍に敵う者はいなかった。

それなのにリン自身が不安を感じている。

つまり、相手にはリンを不安にさせるだけの何かがあるということに

しかし


「リン! 不安になると思うけどここは私たちで食い止めるって言ったからには頑張ろう! 大丈夫! きっと和矢がこの毒を何とかしてくれる!」

「……そうね、不安になったってこの状況をどうにかできるってわけじゃないしがんば……!!!」


リンの表情がこわばった。

それを見てメリアは


「どうしたの?」


と聞いたすると


「槍が刃こぼれしてる……いや! 溶けてる!」

「!!! どうして!」


リンは槍の手入れを毎日している為、

槍の状態は万全のはずだった。

しかし現に刃は少し溶けてしまっている。

そして一つの答えを出した。


「もしかしてこの毒! 刃を溶かすのか!」

「!! でっでも確かにそうかもしれない……でもそれじゃあ!」

「そう! 食い止めるって言ったけど、時間をかけられないと思う……」


そう言ってリンは


「早く戦闘を終わらせる!」


そう言ってそのまま槍を猛めがけて突いた。

すると

猛は逃げる様子を見せなかった。

リンにはその姿を見てより不安が積もった。

しかし、そんなことを考えている暇はなかった。

そんなことをしている間にも槍が毒にやられると思ったからだ

そのため考えずに猛めがけて飛び込むしかなかった。

しかし!


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


ガシイイ!!


「!!」


猛は槍をそのまま受け止めた。


「!! いったいどうして! そんなことをして何の意味が! やはりただのイカレなの!」


そう思っていると衝撃のものをリンは見てしまった。

猛の手からは血が一切出ていなかった。


「!! 何で……!!」


リンは槍をよく見ると猛が触れている槍の部分が溶け始めているのである。


「うううううああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


悲鳴を上げてリンは槍を引っ込めようとするが猛は力いっぱい掴んでビクともしない

それを見ていた長谷川は


(ふむ、これが俺Tueeの力か、これだけ見るとやっぱ俺たちってすごくはなってるんだな……)


と改めて感じた。

すると長谷川の周りは町の人たちで囲まれていた。


「我々でもお前一人をこの人数で相手にすれば訳ないと思うがね?」

「そうね、こいつなら殺せそう」

「私の息子の敵は取らせてもらうわよ」

「僕も許せない! お姉ちゃんの敵は取る!」


と周りには20人ほどの人がいた。


「そうですか、分かりました、お相手しましょう、紳士淑女の皆様」


そう言って長谷川は構えた。

そして、


「ああ、そうそう、言ってませんが俺、喧嘩は結構好きなんですよね」


そう言って不気味に笑った。

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