第4話『自己紹介』

「まだやってるの? 諦めたら?」


斉藤は呆れたように竜に言った。


「俺はお前らと違うんだ! 逃げて見せる!」


竜は睨みながら斉藤に言った。

斉藤は笑いながら


「まあ頑張ったら? 出来たら呼んでね、俺も逃げるから」

「誰が呼ぶか!」


そして、竜は穴に入って行った。

猛はと言うと


「はあ、俺も手伝おう」


と言って一緒に穴に入って行こうとした。


「あ、ちょっと待った。お前まだここに来たばかりだし皆自己紹介するよ」


と言って斉藤は猛を止めた。


「自己紹介? 皆の? 死ぬのに?」

「まあまあ、最後の人間との関わりだぜ? 大切にしようぜ……」

「そうだぞ? だってここでは皆としか話せないんだから」


と言って皆が囲んだ。

猛はの周りに6人の男がいた。


「今思ったが結構ここにいるんだな……」


猛は周りを見ながら言った。

しかし、皆は


「「「「「「あははははははははははは!!」」」」」」


と笑った。

そして斉藤は


「もっといたよ! でもみんな処刑されたんだから少なくなったんだ! 前は30人はいた!」

「!! ここに30人!」


と猛はビックリした。

が良く見るとこの牢獄はかなり広かった。

むしろ100人用として作られたみたいであるぐらいだ

すると斉藤は


「前の看守がおしゃべりでさ! ここは元他の敵国を捕まえていたいわば捕虜用の監獄らしい」

「へえ、そうなのか?」

「ああ、そして処刑も今のような奴じゃなくて隠れて実験したり、人がどのようにしたら死ぬのかとか魔法の微力調整でどの程度でも死なないとか色々な研究していたみたいなんだ」

「!! 人体実験!」

「まああの薬もその色々な犠牲が伴って作られた毒物だ」

「はあ!」


猛はかなり闇の部分を聞いたようだった。

自分の世界でも昔そういうことをされたとか非人道的なことが行われていた。

人体実験で医療が発展などが行われた。

しかし今聞いた話だけだと死刑の拷問法方を探るための実験ばかりにしか聞こえなかった。


「まあ、考えてることは分かる、でもこの国では魔法で病気やけがはだいたいは治るから必要ないんだ、まああるとしたらポーションの向上ぐらいかな? それ等があるからわざわざ化学が発展する必要性がなかった。だが、昔この国の王様の姫君が無残に殺されたんだ、結構な暴虐な小娘だったみたいで、恨まれたせいで殺害された。王はそれを許せなくてそのものをその当時は苦しめて殺すことが出来なくて一瞬にして殺してしまった、それを嘆いた王が出来るだけ罪人を苦しめて殺すために戦争していた他国の捕虜をここに詰め込んで出来るだけ苦しめる実験をし続けた結果が俺たちだ……」


斉藤は俯きながら言った。

猛は


「なあ、俺たち以外でこの刑を受けたのって?」


斉藤は質問に対して


「初代が知る限り俺たちだけだ」

「初代!」


そして斉藤はある紙を取り出した。


「これが初代の最後に残した言葉だ」

「ゴク」


猛は息を呑んだ。

そして斉藤はスーッと息を吸いそこに書いてあることを読んだ。


「やだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! S○xしたいおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! したいんだおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! あの子とかあの子とかあの子とか!! まだおかずにしていない子がいっぱいいるのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!! づべえええええええええええあがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! って言って処刑されちまった。 ううっ」


と斉藤は涙をぬぐった。

それを聞いて猛は


「それは遺言じゃねえ、情けねえ断末魔だ」


と言い切った。

斉藤や他の皆は


「何言ってんだ! 皆それを望んでるんだぞ!!」

「そうだそうだ! 非童貞に童貞の気持ちが分かるか!」

「あれやったら恋も部活も勉強もランクアップって言ったのに嘘かよあれは!!」

「お前に関してはそれは売り文句だから!!」


泣いている男に猛は言った。


「まあ、うう、話はそれたが自己紹介する。俺はもいいな、右から順に言ってくれ」


と言って斉藤の右から話し始めた。


「俺の名前は田中 令だ、仕事はアイドルの追っかけをしてる」

「それは仕事じゃない」

「何言ってるんだ! ドルオタにとってアイドルの追っかけこそ仕事なんだ!」

「そんなこと言ってないで親孝行しなさい!」


そして次


「俺の名前は紅桜 乱舞! 仕事は世界の調律を管理してワルプルギスの発生を食い止めている! 右手の黒龍(ブラックドラゴン)を封印が解けないように特殊な包帯で封印していたがそれが異世界の奴らに解かれてしまった! きっとこのままじゃこの世界はおしまいだ! きっと奴らもこの俺の力が必要と分かり俺を牢から解放するときがあるだろう! それまでの我慢だぜ! なので俺は世界のためにもここでの生活を今のところは受け入れている! なぜなら俺は主人公……」

「はいはい分かった分かった」

「きっ貴様! 真面目に話しているのにちゃんと聞いているのか!」

「聞いてます聞いてます……」


すると斉藤は


「そうだな、乱舞、そのためにもお前は生き残らないとな」


と言って割って入った。

そして続けて


「俺たちは自分の命よりお前が一番重要だって分かってるから、必ず生き残れよ!」

「!! ふん! その通りだ!」

「お前も謝って」

「え、はい、ごめんなさい、この世界の為にも頑張ってください」


と一応猛も謝った。


「ふん! 分かればいいんだ! 全く!」


そして斉藤は


「ごめんな……こいつも最初はこんなんじゃなかったんだ……」


と言って乱舞の代わりに謝った。

猛は

「それはどういうこと?」

「ああ、こいつは一番この中で大人しくてな、正義感も強くて皆を励ましてくれてたいわばマスコットみたいなやつだったんだ、すごく真面目で皆に気が使える奴だったんだが……」

「それがどうして、まさかこの極限状態で?」

「ああ、おかしくなっちまった……幻想を抱くことで少しでも自分にかかる不安をおしこめているんだ……許してやってくれ……」

「ごっごめん、そんな事情とは知らずに……」

「いいんだ、でも出来るだけこいつのために乗ってやってくれ、そしたらこいつ落ち着くんだよ」

「分かった」

「頼むな、こいつの死刑があと5日だからそれまでの辛抱だ」


と斉藤は最後にとんでもないことを言った。

それを聞いて猛は


「お前実はこいつのこと嫌いだろう!」


と言ったが


「ソンナコトナイヨ」


と棒読みで斉藤は言った。


「……まあもういいや」


猛は深く考えるのをやめた。


「俺の名前は前橋 大貴、よろしくな、仕事は自宅警備だ」

「ニートだな」

「違う、自宅警備だ」

「……そうか」


猛はツッコむのが面倒臭くなった。


「俺の名前は葉桜 圭だ、仕事はイラストレーターだった」

「へえ、どんな絵書いてたんですか? 俺ラノベとか結構読んでたんですよね!」

「これだよ」


と言って葉桜は紙を見せた。


「これは?」

「猫だ」

「へたくそ!」

ビリイイイイイイイイイイ!


と言って猛は破り捨てた。

その絵は幼稚園児が書いたような絵だった。


「な! 芸術になんてことを!」

「こんな猫がいるかあああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


猛はキレながら言った。


そして最後の男だ


「長谷川です、ホームレスから一転異世界で一発逆転だと思ったんだけど……はあ……」

「その名前でホームレスはやめて」

「俺の苗字に何か文句でも?」

「いえ別に」


と一通り自己紹介が終わった。


「さてと、寝ようぜ」

「寝るべ寝るべ」

「ふん、俺はまだ起きてるよ」

「そうか、夜更かしも程ほどにな……」

「はあ、ねむ」

「公園を思い出すな」

「俺たちは分からないけどな」


と皆寝ようとした

すると猛は


「そういや、斉藤さんは仕事何してたんですか?」

「オ○ニー」

「それは仕事じゃない」


猛はろくな人間がいないと思った。

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