第2話『プリズナー』
「何だよそれ! じゃあ俺たちは捕まるために異世界に転生したみたいじゃねえか!」
「まあ、うん、そう思うのも無理はない、俺もそう思った。 今だってそうだ……」
と斉藤は悲しそうに言った。
他の男たちも
「俺たちだってまさかこんな目に逢うとは思わなかった」
「ここもだいぶ広くなったな……」
「仲間がいなくなることは、悲しいことだ……」
「まあ……また増えたんだけどね……」
という会話をしていた。
すると猛はあることに疑問を思った。
「ちょっと待て、広くなったってどういうことだ? まさか! 出られるのか!」
と少し期待を寄せながら聞いた。
すると斉藤は
「ここは日本のように1人殺しても釈放されるような甘っちょろい世界ではないさ……」
と俯きながら
それを聞いて猛は
「じゃあみんなどこへ行ったんだ! まさか……」
と真っ青になりながら猛は聞いた。
「そうだ、皆死刑にされた……当然だ、人を殺したんだからな……」
「そんな……」
猛は絶望した。
そして悲鳴を上げるように
「ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 俺はまだ異世界に来たばかりなんだああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア! それなのにここで犯罪起こして死刑だなんてえええええええエエエエエエエエエエエエエエ!! 嫌だあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「うるさいぞ! 71番!」
と看守に怒られた。
猛は呻きながら蹲った。
それを見て
「まあ、いずれ慣れるさ、そして受け入れることが出来る……あまりの死を待つ時間が長すぎて気が変になった後は今の状態が続くからさ……」
と斉藤は励ました。
それを聞いて猛は
「ふざけるなあああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 俺は出るぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 絶対に出てやるぞ!!」
と
それを聞いて皆は
「かわいそうに、まだ現実を直視できないか……」
「チ! 情けねえ!」
「お前も最初はそうだったろ? そう言ってやるな……」
「俺が言ってるのはここから出ようとしないお前らのことだよ!」
「穴掘っても無駄だぞ……」
「出れるようになるまでいつまでかかるんだ? それ?」
「あと何日か?」
「適当だな、もし出れるようになるならあと3日に作ってくれると嬉しい」
「なら手伝え」
「まあやることないし……いいよ」
と言って男は穴を掘っている男を手伝った。
すると猛は
「僕も手伝います」
「そうか、お前名前は」
「僕は山本 猛です」
「俺は桐田(きりた) 竜(りゅう)だ」
「……俺は高橋(たかはし) 圭介(けいすけ)」
と自己紹介した。
3人は頑張って掘り続けた。
すると桐田は
「まずい! 早く戻って一旦これ隠すぞ!」
と言って2人を引っ張った。
「ああ、あれか」
「アレ?」
そう言って取り敢えず猛も戻って行った。
すると
「おお、間に合ったか……いつもよくやるよ」
と斉藤は呆れるように言った。
すると
「全員いるか!」
と看守が見回りに来た。
(看守が来るから戻ったのか……)
そして、看守は
「実は今日は報告がある」
「囚人番号54番!」
「? はい!」
と元気よく挨拶した。
その男は先ほど穴を掘るのを手伝っていた高橋 圭介である。
猛は穴を掘る際に聞いたところ3日後死刑にされると宣告を受けているらしい。
すると看守は
「54番! お前はもう精神的に真面になっている!」
「……へ?」
「? なあ、斉藤? 精神的に真面になったらどうなるんだ? もしかして出ることが出来るとか?」
と疑問に思った猛は斉藤に聞いた。
すると斉藤は
「見てれば分かるさ……」
と悲しそうに言った。
そして看守は
「お前は今日死刑執行する! ついて来い!」
「!! ちょっと待ってくれ! 俺の死刑は! 俺の死刑は3日後じゃないかあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
と圭介は絶叫した。
圭介は涙を流していたが
「うるさい! ついて来い!」
「いやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
悲鳴を上げながら圭介は連れて行かれてしまった。
「そっそんなこともあるのか?」
と猛は斉藤に聞いた。
「まあ珍しいな、俺はまだ2回しか見たことない……」
「そっそんな! じゃあいつ来るか分からねえじゃねえか!」
竜は怖がりながら言った。
斉藤は
「まあ、そうだな、めったにないからあまり誰にも言ってはいない……俺も少し忘れていたぐらいだ……」
「何呑気言ってんだよ!」
と竜は斉藤を怒鳴った。
「でもなあ、避けられないし……」
「いつもそうやって諦めやがって! ムカつくんだよ!」
と竜は斉藤の胸ぐらを掴んだ。
が
「おいおい、離せよ、俺を痛めつけてる場合か? 時間ないんだろう?」
「!! くそおう!」
と竜は怒りながら斉藤を離した。
すると
ギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴギゴ
と何かを運ぶ音がした。
その音と共に斉藤は
「ああ、来たか……」
「来ちゃったな……」
「いやだな……」
「3日後だと思ってたから少しきついなあ……」
とそれぞれが話し始めた。
「なっなんだよ! 何かあるのかよ!」
と竜は聞いた。
猛は
「え、お前は知らないのか?」
「ああ、俺も最近は言ったばかりだからな! 死刑になった奴を連れて行かれるのも初めて見る!」
と言った。
すると
先ほど連れて行かれた男、高橋 圭介が縛られていた。
「うううううう!! ううううううううううううう! ううっ」
目隠しをされていて、口を塞がれてうめき声もろくに出ていなかった。
「なっ何が始まるんだ!」
猛は真っ青になりながら震えた。
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