第4話 私の記憶

 私は対岸からのラブコールを勝手にうけとめながら、チラシ配りを続ける。

「けど、あの子、どっかで見た気がするんだよなぁ」


 時間は午後三時を回ったころ、一人の青年がこっちに歩み寄ってきた。

「わっ……!」

 思わず声を出してしまった。前の店のお客さんもといご主人様だ!何となく覚えてもらっているかも、恥ずかしい気持ちに顔を反らしてしまう。

 そして、勢いで猫の着ぐるみ頭部がぐりんと回って、視界を奪う。痛い。


 もうどこかに行ったかな? と着ぐるみの頭部をもとに戻すと、ご主人様は居なかった。


 代わりに、とてもきれいな花が、足元に置いてあった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る