第2話 ある休み時間、二人は友となる。
俺は高校の休み時間に初めて人に話し掛けられたのかもしれない。
「ねえ、聞いてる?」
「あ、はい。聞いてます」
「なんで敬語なの?」
しまった。同級生に敬語を使ってしまった。明らかにこれは変だ。
「人と話すことが久しぶりでつい」
俺は苦笑しながらそう言った。
「え? じゃあ家族とも話していないの?」
さすが
「いや、そんなことはないよ。昨日は妹とちゃんと喋ったし」
「へえー。陰仲って妹いたんだ」
「ああ、俺と容姿のレベルの差が大きすぎてイラつく妹が一人いるぞ」
事実、俺の妹は下手したら目の前に立っている美少女よりも可愛いかもしれない。まあ、その美少女も負けておらず、茶髪ロングと青く潤っている瞳のマッチングは俺の妹を超えているだろう。
「可愛いの!?」
「なんで俺の顔見ながらそんなに驚いてるんだよ。ひょっとして俺の顔面偏差値からすると可愛い妹は生まれない、とでも思っていたのか」
そうだとするとこいつは失礼な奴だ。
「いやいや、そんなこと微塵にも思ってないよ!」
「本当か?」
俺は懐疑の目を向けながらそう言葉を返し、それに対し彼女は頷いていた。だが、この焦り具合からしてこいつは嘘を
そんな時ふと、俺の脳裏には一つの疑問が浮かんだ。
「ところでさ、なんでお前こんなにも親しげに会話出来るのにぼっちなんだ?」
彼女は特に表情を変えず、そのままの笑顔で言葉を返す。
「だって、友達なら同じ趣味の子がいいじゃん?」
いや、俺は素直に驚いてしまった。
優美は自分と同じ趣味じゃない人間についての関心はゼロのようだ。
待てよ、そうなるとまさか――。
「だから陰仲、友達になってよ!」
やっぱりだ。
正直、嬉しかったのだが高校で出来た初めての友達がこんな美少女ということに俺は少し照れくささを感じた。
だが、今日を
やはり神様の考えが不正解で、俺の考えが正解だったようだ。
俺は神様に勝てたような気がして、この時の気分は良かった。
「わ、分かった。仕方ないから友達になってやるよ」
なぜ、心臓の鼓動が早くなっているんだよ。俺はツンデレかよ。素直に嬉しいなら『仕方ないから』の部分は除けよ。
そんなことを後悔しつつ、俺と優美は一つの休み時間に友達になった。
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