第3話 渋井谷子の奇跡。
ここは品川駅の谷子。
「やっときた。2ターン目のサイコロだ。」
渋井谷子は奇跡的に今回は特別にスマホを持っていた。持っていないと、どうにもならないからだ。
「まったく問題だらけの鉄道ゲームだな。」
この物語の最大の問題は、1話1500字設定でも、一人一人のサイコロの目と電車の乗り降りを書いていくと、それだけで字数がオーバーするため、全話のように1ターンだけで1話が終わってしまう。
「私は実験台なの? キャラ同士の会話やコミュニケーションはどうするの?」
その通り。この試しゲームだけを描いてみても、問題点が山のように出てくる。ルール説明だけしていると、キャラクターが目立たないので共感や感情移入ができないから、鉄道ファンしか喜んでもらえない危機がある。
「谷子、2投目いきます。」
谷子が2ターン目のサイコロを振る。
「5か。」
谷子のサイコロの目は5だった。
「新橋の栞です。サイコロを振ります。出た目は3でした。」
アニメじゃないので、詳細を細かく略して一行で書くとこんな感じ。
「ああ!? 5を出した怪獣ちゃんと東京駅で出会えるかもしれない! 駅のホームで待っている時は山下達郎のクリスマスイブをバックミュージックでかけなくっちゃ。キャア。」
シスコンの栞のテンションはアゲアゲ。
「どちらが大きな目を出すか、勝負だ!」
「望むところよ! ドキ。」
東京駅の道子とドキ子は張り合っていた。
「東京の鉄子、サイコロを振ります。出た目は!? 1!?」
ショックを受ける道子。
「ホッホッホ! 最初からドキ子が勝つことは決まっていた! だってドキ子はカワイイもん! ドキ。」
「いいから、早くサイコロを振れ。」
サイコロ1つ振るだけで、キャラの掛け合いでおもしろくしなければならない。
「かわいいドキ子、サイコロを振ります。出た目は!? 6!?」
「なに!? 6だと!?」
思わず道子はドキ子の6の二連続に衝撃を受ける。ちなみにサイコロで2連続で6が出る確率は36分の1である。おまけに3連続は216分の1である。試験に出るので、良い子は、これくらい覚えておこう。
「よいしょ。」
サイコロの目の5が出た谷子は電車に乗った。
「そうよ! 品川から怪獣ちゃんが乗ってくるから、同じ電車に乗れるはず!」
栞はやってきた電車に飛び乗って、全車両を徘徊して谷子を探す。
「怪獣ちゃんがいない!? どうして!? なぜなの!?」
消えた谷子。謎を残しながらも電車は走っている。ここでネタが分かっている人は鉄道を愛している人だ。ミステリー小説もかけるな。
「バイバイ。道子ちゃん。」
「必ず抜かしてやるからな!」
サイコロで1を出した道子は、東京駅の隣の神田駅で下車した。ここで初めて、誰かの乗車シーンをカットしてみた。特に違和感はない。大丈夫だろう。
「日暮里に、かわいいドキ子が、キター! この調子で優勝するぞ! ドキドキ。」
この時点で6を連発で出せるドキ子は、サイコロの女神的ポジションを確立する。もし6を5回連続出せれば、サイコロを5回振っただけで、山手線を一周できる。
「優勝者は、渋井谷子!」
その時、スマホにメッセージが送信されてくる。
「なに!?」
「どういうこと!?」
「ドキ?」
道子、栞、ドキ子は、谷子が優勝したと知って驚く。
「うわあ!?」
なぜ谷子が優勝なのか説明しよう。待ち疲れてフラフラの谷子は品川駅の人込みに押され、新宿行きの山の手線に乗車した。サイコロの目が5なので、5個目の駅で降りた。
「渋谷に帰って来ちゃった。」
ルールに逆走してはいけない、とはなかった。よって1番に渋谷駅に到着した谷子の優勝は合法である。またも渋井谷子は奇跡を起こした。
つづく。
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