第2話 試しにゲームする。

 ここはJR東日本の山手線の電車の中。

「すごいー! みんな同じ渋谷高校の生徒なんだ。」

「よろしく。」

 奇跡的に、谷子たちと道子は同じ高校に通っていた。

「そうだ! せっかくだから、山手線を一周しようよ!」

「え? 隣の恵比寿で降りるんだけど。」

「谷子ちゃん、機関車トーマス2の絵本をあげよう!」

「わーい! 絵本大好き! 山手線を一周する!」

 谷子は大好きな絵本には弱かった。

「ちなみに山手線は一周、約1時間! ちょっとした小旅行が楽しめるわよ!」

「電車に乗ってるだけで旅行ができるって、いいわね。」

「駅の数は29駅! 今度、高輪駅ができて30駅になるのよ!」

「すごいー!」

 鉄道ファンの間でも、名称問題があり、高輪駅派と、高輪ゲートウェイ派に別れているらしい。

「渋谷から恵比寿、目黒、五反田と電車は進むわけよ。」

「ふむふむ。」

「eスポーツ的に考えると、指示を出すプレイヤーは指令室な訳よ。サイコロを振って進む駅の数を決めたり、何か問題があれば鉄道の博識で答える。」

「ふむふむ。」

「リアルゲーム的に考えると、指令室の仲間からの指令をスマホで受け取り、その指示通りに行動して、目的の駅を目指す。簡単でしょ。」

「おもしろそうだね。」

 道子の説明を聞いて谷子たちは、鉄道ゲームの内容を大まかであるが理解した。

「じゃあ、次の大崎で降りて、実際に私たち4人でリアル鉄道ゲームとして、やってみましょう。ルールは山手線だけで1番速く、渋谷駅に着いた人の勝ちよ! 勝者には、道子が撮り鉄をしている姿のプロマイドをあげるわ。」

「おお!」

 ここに渋谷高校鉄道研究会は発足した。会長は、鉄道子。会員は、谷子、栞、ドキ子である。

「それでは全員で一回づつサイコロを振って進んでいくわよ。」

「おお!」

 まず道子がサイコロを振る。

「やったー! 6だ!」

 サイコロの目が6なので品川、田町、浜松町、新橋、有楽町を通過して、東京駅まで行ける。

「えい。」

 谷子がサイコロを振る。

「1・・・。」

 谷子は品川駅で下車である。

「大丈夫、私も1を出してあげるから。」

 栞がサイコロを振る。

「4、中途半端な。」

 栞は新橋を目指す。

「ドキ子! 10を出すわよ!」

 サイコロの目は6までである。

「6だ! まあ、許してあげよう! ドキ。」

 道子と同じく、ドキ子は東京駅まで行く。

「さあ、電車が来たから乗るわよ。」

 道子たちは電車に乗っていく。

「ゲームと思えば、電車に乗るのが楽しくなるね。」

「そう? こんなに緊張して電車に乗ったのは初めて。」

「怪獣ちゃんは滅多に電車なんか乗らないもんね。」

「ドキ子なんだか、ドキドキしてきた。ドキドキ。」

 電車は品川に着く。谷子は品川駅で降りた。

「怪獣ちゃん、バイバイ。一人でも強く生きるんだよ!」

「お姉ちゃん! 栞お姉ちゃん!」

 電車は扉が閉まり発信する。渋井姉妹の涙のお別れである。

「大丈夫よ。スマホで全員とはつながっているんだから。」

「谷子ちゃん、スマホを持っていたかしら? ドキ。」

 少しの不安を感じる道子、栞、ドキ子であった。

「じゃあ、またね。」

 栞が新橋駅で降りた。

「やってきました! 東京駅!」

「ドキ子が1番ね! さすがカワイイ! ドキ。」

 道子、ドキ子は東京駅で降りた。これで無事に1ターン目を終えた。

「待つのが長い。」

 1番速く下車した谷子は、道子、ドキ子が東京駅に着くまでに15分は待たされた。本ばかり読んで体力の無い谷子は、品川駅の新幹線下車の山の手線乗り換え組の満員の駅のホームで人込みにもまれ吐きそうなくらい気分が悪くなっていた。

 

つづく。

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