第9話 オークゾンビ
マジックシールドを使って、魔法攻撃だけは何としても防ぐ。
あまりにもダメージが大きすぎて、あんなもの食らっていたらポーションがいくらあっても足りやしない。
ゾンビゴブリンがマナクリスタルを落としてくれるから、マナはもう気にしなくてもいい。
ブルークリスタルが通常ドロップで、レアドロップのパープルクリスタルが上位版である。
切れ味などなくとも両手剣の威力はとてつもない。
ブラッドソードのいいところは、オーバーキルになっても同じだけ回復するところだ。
オーラのおかげなのかステータスのおかげなのかはわからないが、力も強化されているらしく、でかい両手剣であっても全力で振り抜ける。
オーラのおかげで防御力、攻撃力が上がっているのは確かだった。
近寄ってくる奴はぶ厚い両手剣を叩きつけ、遠くにいる奴にはアイスダガーを連打だ。
こちらが先に敵の存在に気付くことができれば、事はもっと簡単に済む。
ゾンビ系の急所は心臓のあたりにある黒い器官であることはわかっているので、近寄ってナイフで一突きにすればいい。
腐りかけた皮膚と骨くらいしか阻むものがないから、非常に簡単である。
戦いに夢中になっていて気が付くのが遅れたが、なぜか人工的な建造物が現れ始めた。
何に使うのかもわからない細くて高い塔が立っていたり、遺跡じみたストーンサークルなどがあちこちにある。
塔の中には何もない。
しばらく進むと、石でできた神殿のようなものが見えてきた。
壁が洞窟内を埋めており、乗り越えられるような高さではないように思える。
俺は神殿の壁沿いにすすんだ。
神殿の入り口らしきものがあったので近寄ると、そこにはオークゾンビが立ちはだかっていた。
あの、北海道で自衛隊を壊滅させたオークのゾンビである。
軽自動車くらいの図体に、俺の腕くらいはある牙が生えていた。
恐怖で足がすくむが、相手は問答無用でこちらに突進してきたので、強制的に戦闘になる。
恐れるな、と自分に言い聞かせる。
怪我を負ったところで直せるのだから、あの牙を恐れる必要はない。
俺はこれでもかと勢いをつけて、正面から両手剣をイノシシの眉間に叩きつけた。
牙が目の前に迫って、そこから巨大な魔弾が放たれた。
10メートルは吹き飛ばされて、地面の上を転がった。
鎧がひしゃげてうまく呼吸ができない。
吹き飛ばされた俺に向かって、イノシシは容赦なく追撃を仕掛けてくる。
喉に何かが詰まって、苦しいと吐き出したら血の塊だった。
俺はオレンジクリスタルを2個、地面に叩きつけて砕くと立ち上がった。
もう一度突進に合わせて剣を振り下ろし、接近したタイミングでアイスダガーを相手の目に向けて放つ。
また巨大な魔弾を食らって俺は吹き飛んだ。今度は自分から後ろに飛んだので、ダメージは少なくなった。
だが、この攻撃を受けては駄目だ。
なんとかしてかわさないと攻撃には移れない。
それに体勢を崩した隙に畳みかけられてしまう恐れもある。
もう一度オレンジクリスタルを砕いて態勢を整えた。
次はもう鎧が持ちそうにない。そうすれば一撃であの世行きだ。
突っ込んできたところで、目を狙ってアイスダガーを放つ。
あきらかに嫌がって突進が弱くなったので、俺は脇にかわしながら剣を振り下ろした。
俺の両手剣が、イノシシの頭に深々と潜り込んだ。
そのまま転がるようにして距離を取り直す。
イノシシはまだ俺に向かって鼻息を荒くしている。
どんだけタフなんだと呆れながら、俺も剣を構え直した。
ダメージはあるらしく、それほど迫力のない突進を仕掛けてきた。
余裕をもってかわしながら剣を振りかぶる。
さっきと同じ、首の根元あたりを狙って振り下ろした。
骨に弾き返された手ごたえがあったが、見ればイノシシの頭はかろうじてぶら下がっているといった具合だ。
それでもイノシシはこちらに向かって突進してくる。
その突進を正面から受け止めて、俺はファイアーボールを放った。
イノシシは既に魔弾を放つ余力もなくなっていた。
ゾンビオークは激しく燃え上がって、そのまま崩れ落ちた。
魔物は弱ってくると、このように魔法に対する耐性もなくなるのである。
ドロップアイテムは、黒い鎧と金色に輝くスペルスクロールだった。
それよりもまずは傷を治さなければならない。
折れた骨が内蔵にでも刺さっているのか、おかしな息苦しさを感じる。
俺は鎧を脱いで、レッドクリスタルを体力が戻るまで砕いた。
この鎧はもう使い物にならないので、新しく出たものに変えよう。
古いのはここに捨てていくしかない。しばらくすれば炭になる。
それにしても初めての複数ドロップである。
ボスか何かだったのだろうか。
鎧の方はアダマンタイトのソルジャーアーマーだった。
魔法はアイスランスである。
この時の俺は気が付いていなかったが、オークゾンビを倒したことで、俺の魔光受量値はとんでもないことになっていたのである。
しかし俺はそんなことに気付かず、神殿の中に入った。
石柱と崩れた石壁のせいで、ひたすら視界が悪い。
出てくるモンスターは、ハイゴブリンのゾンビだけである。
新しく手に入れたアイスランスが恐ろしく強かったので、それだけを使ってゴブリンたちを倒しまくった。
工事現場にあるカラーコーンを二つ、土台のところでくっ付けたような氷の塊が、凄い速度で飛んでいくのだ。
ゴブリンたちがあっさりとバラバラになる。
魔力の消費は45とかなり大きいが、マナクリスタルが豊富に出るので問題ない。
しばらく続けて、レベルはいくつになっただろうとステータスをみたところで驚いた。
もう少し続けていたら本当にヤバかったかもしれない。
俺は全力でその場から引き返すことにした。
伊藤 剣治
レベル 17
体力 421/421
マナ 264/264
魔力 101
魔装 129
霊力 10399
魔弾(13) 魔盾(9) 剣術(9) オーラ(12)
アイテムボックス(5)
アイスダガー ファイアーボール
ブラッドブレード アイスランス
魔光受量値 3498
魔光受領値が5000を超えたところで燃えだし、ぎりぎりダンジョンから出られて助かったという話をネットで見たことがある。
だからこの辺りを過ぎると、現実世界の物質と同じように劣化して、姿形を保っていられなくなるのだ。
だから頭を打って気絶でもしたら、それで死んだも同然なのである。
それでヘルメットなど被って来ては見たが、ファイアーボール一発で炭になって消えた。
ゴブリンはマナクリスタルとショートソードくらいしか落とさない。
たぶん鎧兜のようなものは落とさないだろう。
レアドロップなら可能性がないこともないが、レアドロップだと、ここに居るゴブリンすべてを倒す前に出るとも限らないのが問題である。
村上さんに作ってもらう手もあるが、それだと軽く数百万は請求されそうで怖い。
とてもじゃないがそんな金はないので、使い捨てるには高い市販のヘルメットが一番マシという事になる。
ただ工事現場のものやバイク用のは使えそうになかった。
一度、道を間違えそうになってひやひやしたが、なんとか出口までたどり着いた。
外に出ると、まだ明るい時間だったので驚いた。
やはりボスを倒すのが魔光受領を引き上げたのだろう。
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