第8話 骸骨卒業
一週間ほどイボガエルとウルフ、骸骨戦士だけを倒していた。
そしてアイテムドロップはずっと変わり映えがしていなかった。
しかし、ついに昨日、一週間目にして初めて骸骨戦士からレアドロップが出た。
金色に光るスクロールは、ブラッドブレードという魔法のスペルスクロールだった。
武器に付与することで、敵に与えたダメージの一部を自分のHPにするというものである。さっそく試してみたら、当然、骸骨を殴っても回復した。
攻撃のエネルギーから、回復の力を生み出しているのだろうか。
それと上質なレザーグローブと上質なレザーブーツ、シミターも手に入れている。
なぜ上質という枕詞がわかるかというと、アイテムボックスが手に入ってから、アイテムの名前を知ることができるようになったのである。
見た目では上質のものかどうかなんてなんて、俺にわかるわけがない。
そして俺が手に入れた岩に生えていた鉱石だが、これがとてつもなく価値のあるものだとわかったのである。
最近では数多くの調査隊が組まれ、中に入る人が増え、それに伴って研究も進み、利用価値のあるものがわかってきている。
その結晶は、高エネルギー結晶体と呼ばれ、今ダンジョンに入っている人は皆それが目当てである。
無許可でダンジョンに入る者も増え、それに伴ってアイテムの情報も増えた。
今ではほとんどのアイテムが取引の対象になり、売り買いできる場所も増えた。
買取を行っているのは街のリサイクルショップである。
目印は、看板のすみに魔法陣のマークが書かれたリサイクルショップである。
魔法陣の書かれたリサイクルショップなら、どんなアイテムでも換金できるし、逆に買うこともできる。
とはいえ、今現在、積極的に買取を行っているのは各国の政府機関や軍需関係者だけだという話である。
一般人が行っているのは、ひたすら売る方である。
先日会った村上さんも、隣の市でリサイクルショップを始めていた。
俺はいらない装備が出たらすべて村上さんのところに持って行って売り払っている。
俺のダンジョンから出る物は他と違っているし大量なので、その部分で他の店に行くとめんどくさいのだ。
しかし、武器とスキルストーンについては値下がりしているのから、大して儲かっているわけではない。
スペルスクロールだけは、威力が大きく、覚えてすぐ使い物になるから、今では数百万というすごい値段で売られていた。
ダンジョンがブームになりすぎて、競うように攻略が進められているのが現状である。
中でも飛び道具が一番人気の武器であるそうだ。
俺は地面に転がる骸骨戦士を眺めてため息をついた。
レベルも上がらなくなってきたので、そろそろ先に進む頃合いだろう。
むしろ戦いがいのある相手だったからといって、コイツの相手を長くやり過ぎた。
伊藤 剣治
レベル 15
体力 351/351
マナ 214/214
魔力 83
魔装 95
霊力 7311
魔弾(12) 魔盾(9) 剣術(7) オーラ(9)
アイテムボックス(4)
アイスダガー ファイアーボール
ブラッドブレード
レベルが上がらなくなってきたくらいから魔光受量値も上がりにくくなり、長居もしやすくなる。
だから本格的なアイテムハントがやりやすかった。
現に骸骨相手なら、魔光受量値は一時間で二桁に納まる程度だ。
長居した理由の一つに、骸骨戦士はレアな回復クリスタルをドロップするというのもある。
どういうわけか、このダンジョンは全体的に回復アイテムの出がいい。
考えられる理由は、このダンジョンがアンデット系のモンスターしか出ないということくらいなのだが、納得できる説明でもない。
暗くてわかりにくかったが、カエルもウルフもアンデットだったのである。
東京のダンジョンでは、あまり回復クリスタルを落とさないことから、回復アイテムは大変高価であり、買うこともできなかった。
だから必要な分は自分で出すしかなかったのだ。
とはいえ、ダンジョンのリポップはものすごく遅いし、この辺りにいた骸骨戦士はすべて倒しきってしまったから潮時なのである。
オレンジクリスタル16個、レッドクリスタル33個が最終的なドロップだった。
それ以外のドロップは、オンボロの武器防具と、今では金にもならないスキルストーンだけである。
俺の装備も少しだけ変わった。
市販の厚めのタイツを上下で着て、その上にズボンと上着、鎧を身に着けている。
頭はアイスホッケー用のヘルメットを買った。
そして腰の後ろにナイフをベルトで止めて、左手は魔法のために空けておき、右手に抜身のシミターを持つスタイルである。
ドロップはアイテムボックスに入れて、ザックを背負うのはやめた。
今日は4メートル近い段差を降りて、新しい区画に向かう予定だった。
降りられそうな場所は、もう見つけてある。
下にいたのは話に聞いていたのよりは大きい気がするゴブリンのアンデットだった。
5体ほど同時に出てきたが、俺の戦い方は変わらない。
出会い頭にファイアーボールをぶっ放して、剣を持って突っ込む。
魔弾をマジックシールドで防ぎつつ、頭にシミターを叩きつける。
わき腹にナイフをねじ込まれるが、ブラッドブレードを発動させたシミターでゴブリンの首を飛ばした。
傷口は塞がったが、流した血の分が戻っていない。
そこに敵の放ったファイアーボールが飛んで来る。
ゴブリンが魔法を使うという情報は聞いたことがなかったので、上位種のアンデットだろうか。
せっかくのヘルメットが炎に巻かれて、さっそく消し炭になっている。
俺は残った部分を頭から外して投げ捨てた。
オーラでなんとか熱を緩和しつつ、アイスダガーを撃ちまくって、魔法を撃ってきたゴブリンを倒した。
HPを200、マナを100ほど減らしながら、なんとか勝利した。
回復するのに、カエルの肝3個とレッドクリスタル2個が必要である。
満タンにしておかなければ、次、おなじような敵に出会ったところでエンドである。
仕方なくアイテムを取り出して失ったステータスを満たした。
もはや魔弾では力不足を感じる。
マナを使わずに撃てるから、これを強化することで済ませられるならそれに越したことはなかった。
ところが、マナを使うアイスダガーやファイアーボールですら力不足である。
となると今頼れるのはブラッドブレードくらいしかない。
だがシミターではダメージが小さすぎて回復が足りていないのである。
俺はアイテムボックスから両手剣を取り出した。
使うかもしれないから、売らずにとっておいたものである。
レベルが上がって強化された体でも、この剣は重く感じられる。
上質なヘマタイトの両手剣である。
俺が使っている鎧も同じ謎金属が使われていて、上質なヘマタイトの鎧になっていた。
こいつを使って、なんとか回復アイテムの消費を押さえたい所である。
そんなことを考えているうちに、3体のゴブリンゾンビが襲い掛かってきた。
俺は先頭の一匹に向かって剣を振る。
剣先がかすめたくらいの当たりで、ゴブリンの頭は吹っ飛んでいった。
しかし、それでバランスを崩してしまい、がら空きになったわき腹へとナイフが迫る。
ナイフはなんとか鎧で防いだが、抱きつくように突っ込んできたゴブリンが邪魔で剣が振れない。
首筋に噛みついてきたので、なんとか引きはがして、ナイフでもって頭蓋骨を砕く。
そしてナイフを投げ捨て、両手で持ち直した剣でもって、残りの一匹を一刀両断にした。
手で押さえても、指の間から血が滝のように流れだしてくる。
心拍数が上がっているから、出血の量が尋常ではない。
回復クリスタルを急いで砕き、とにかく出血だけは止める。
そして、投げ捨てたナイフを探して、シースに戻した。
そしたら、すでに次のゴブリン御一行が俺めがけて殺到してくるところだった。
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