鶴と亀が滑った

 親戚の家に行くために夜行バスに乗っている時だった。隣の席から、どうやらイヤホンから音漏れがしているようで、かごめ唄が小さくずっと聞こえてくる。今時……と言うか日常的に童謡を聴いている人なんて珍しい。芸術関係の人だろうか。

 リピートしているようで、かごめ唄はずっと聞こえてくる。何度も聴いている内に、私はあることに気付いておや、と思った。「後ろの正面だぁれ」のフレーズが聞こえないのだ。自分には関係ないか、と私は寝ようとした。だが、かごめ唄が耳について寝られない繰り返し流れてくる唄に私は苛立ちを覚えて、隣席のカーテンを引いた。


「後ろの正面だぁれ?」


 座席には誰もいなかった。背後から聞こえたその言葉に思わず振り返ると、青白い顔の子どもが立っている。


「はずれ」


 次の瞬間、バスが横転した。

(バス、かごめ唄、親戚)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る