冷たい土の中で

 梅雨時に林間学校があった。ちょっと変わっているが、この学校ではそうなのだとか。宿舎の庭には、とても立派な紫陽花がある。全て青色で、梅雨時に相応しい。


 二泊三日の二日目、明日帰ろうと言う日に、こっそり抜け出して庭で遊んでいた男子たちが、管理人に見つかってこっぴどく叱られたのを良く覚えている。よほど大事にしているのだろうか、管理人はあまりこの紫陽花に子どもたちが近づくのを良しとしていなかったようだ。


 それから月日が流れて私も大人になった。ある日ニュースを見て仰天した。あの時林間学校で泊まった宿舎が老朽化のため解体されたのだそうだが、その時に庭の下から大量の人骨が発見されたらしい。


 あの管理人はもう死亡している。生前頑なに解体を拒んでいたため、彼の関与が疑われているとのことだ。

(林間学校、紫陽花、解体)

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