かえれ
その祭りは呪いのせいで毎年失敗すると言われている。去年は神輿を担いだ途端に担いでいた棒がばっきり折れたし、一昨年は実行委員のテントが突然燃えだした。
何の呪いかと言われると、事故の多い交差点で死んだ少女の呪いだとかなんとかまことしやかに囁かれている。神輿に気を取られている時に車にはねられたとか。
だから、神輿を道に出さないようにしているのだと言われている。
とは言え、実行委員は毎年あの手この手で安全策を立てて挑む。どうしても祭りを中止にしたくはないらしい。死んだ奴と張り合うなんて、と委員長は毎年悔しそうだ。
だから今年も神輿は出る。清めの塩、御神酒、御幣。例年よりばっちりお祓いや厄除けをして出した神輿は、順調に進んだ。ああ、今年は呪いに勝てるかもしれない。誰もがそう思って神輿を見守っている。
神輿のルートは例の交差点も通っている。誰もが固唾を呑んで見守る中、神輿は車両通行止めがされた交差点に進入した。
その時だった。一台の車が、通行止めの看板を跳ね飛ばして神輿に突っ込んだ。神輿のような車、と思ったらそれは霊柩車で、誰もが悲鳴を上げた。神輿は当然めちゃくちゃになってるし、担いでいた有志たちも重軽傷で呻いている。
霊柩車に運転手は乗っていなかった。助けに入った人たちが、割れた窓ガラスの隙間から車内を覗くと、
「かえれ」
幼い子どもの瞳と視線が合ったのだと言う。
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