第3話 温皿

「 温皿 」


黒土の畑で掘ったじゃがいもを使ったスープです、冷めてしまいまいたが


Aさんのお宅のお嬢さんが妊娠したらしいのです

ちょっと話しがあるのですが、と呼び止められまして

まだちょっと早いと思ったのですけれど、と嬉しそうに話すのです


予定は十一月とのこと


いまはもうすぐ桜が咲きそうですが

十一月ともなれば

北極星のあたりから冷たい風が吹きはじめて

葉の緑も赤色に焼けてしまう頃でしょう


峰から吹きおろす山風が、波のかしらを白く染め上げて、ざわつかせますね

そこに帆かけ船など浮かべたら綺麗でしょうね、きっと

船は地球の縁を北から南に航海して

水平線の向こう側に消えていくのです


さて真っ白なお皿のスープは、クリーム色は

きれいさっぱり無くなりました

窓からのひかり、お皿に射しはじめて

もうすぐヒバリの鳴く時刻です


それまでにお別れしましょう


なに、いつもと同じお話しですから

そんなに悲しむことはありませんよ

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