再会
次の日、朝食をホテルで済ませ、軽く身支度をした。もともとリュック一つで旅行に来たからそんなに荷物はない。十時きっかりにチェックアウトし、『花束を君に』を聴きながら公園へ向かった。公園に向かう途中、私は花屋を探した。デパートの中の地下に小さな花屋があり、そこで私はリンドウを三つ買った。
公園に入り、ゆっくりと昨日来た道を散策した。トラツグミは見つけられず、ぼうっとキジを眺めていた。遠くの方に、昨日見かけたカメラをぶら下げている男の人がいた。それでも私は鳥を見続けた。
「あの」後ろから声がした。私は笑顔でゆっくり振り返る。
「はい」
「昨日の方ですよね?」
「ええ」
「その節はどうも」相手は恭しく笑った。私も会釈した。
「奇遇ですね」
「本当に」私は笑顔で言う。
「二日続けてここに来るなんて、本当に動物が好きなんですね」男は興奮したように言う。
「あなたも負けていないですよ」私はにっこり言う。
「少し、歩きませんか、貴方さえよければ」私から誘ってみる。
「ええ、時間はあります」
私たちは動物園の外に一度出た。公園はまだ続いている。
「先日、私の知り合いが実は亡くなったのです」私は名も知らない男に語る。
「それは、」また彼はとても悲しそうな顔をする。
「ご愁傷様です」
「通夜が今日あるらしいのだけれど、私は昨日知ったから行くことができなくて。地元で行われているんです、多分今頃」
「なるほど、それは残念でしたね」
「ええ」私は冷静に言う。
「でも、葬式なんて、残されたもののための儀式ですから」
私はさっき買ったリンドウを取り出す。
「だから、ここで私もお葬式をしたくて」
「いいですね」彼は優しい笑顔で言った。あの人と同じ、笑うと目じりが下がる。
ぽつ、と音がした。上から雨が降ってきた。
「僕も参列します」
「じゃあ、始めましょうか」
「そうですね、雨が降ってきているので,早めにやりましょう」
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