advent.02

 魔物討伐のクエストを終わらせたカズトとレンカは、街に戻る道中で2体のゴブリンと戦闘に入っていた。

 カズトの剣がふり下ろされると目の前の敵はたおれ、光とともに消えてしまった。

 残された1体はカズトのあまりの強さに恐れをなして逃げ出したため、敵が攻撃するヒマもなくその戦闘は終了した。


 カズトはこぼれたあくびを、かみ殺そうともしないで大きく口を開けていた。

「ザコばっかでつまらないな」

「少しは態度に出さないようにしろよ……。それにしてもこの辺はたしかにザコばっかり。楽だけどキリがないよな」

 そういうレンカも腕をぐぐっと上へ伸ばし、上体を右に左に動かしている。

「お前何もしてないだろ」

「戦う前に終わってんだよ」

 カズトとレンカの2人にとって、この辺りの魔物はどうも相手にならないほど弱いらしく、さきほどからこのような調子だ。


「腹減ったな」

 表情も動かさず、おなかの虫が鳴っているようにも見えないが、少しだけうつむいたカズトが腹をさする。

「もうちょっとで街につくから、少しガマンしとけ」

「……そういうときのもうちょっとは信頼できない。なぜなら――」

「待ちやがれ!」

 そこへ再びゴブリンが彼らの前で行く手を塞いだ。

 今度は5体に増え、誇ったような顔つきでカズトを睨んでいた。

 言わんこっちゃない、とカズトは目を細めてレンカへ視線を向けた。が、レンカはこれを無視した。


「さっきはよくもやってくれたな!」

 一番手前にいたゴブリンが声を上げる。5体ともみな顔が同じなので、仮に今口を開いたゴブリンをゴブリンAと呼ぶことにする。

「はあ。どちらさまでしょうか?」

「見覚えがありすぎてよくわかんないな」

 なぜなら今まで戦ったゴブリンも全て同じ顔をしているからだ。

「低コストのためにイラスト一枚をコピペしただけのモブどもがうじゃうじゃと……」

「いちおう文章だからそういうの伝わらないと思う」

「ええい! なにをごちゃごちゃとわけのわからんことを……。しかし、お前らの冒険もここまで! 何故なら我らゴブリン5人衆が来たということは……」

「あー、うるせぇわ」

 ゴブリンAが話している途中にもかかわらず、カズトは剣を手に持ちゴブリンAを斬りたおした。

「ぎゃー! む、無念……」

「「リーダー!!」」

 どうやらゴブリンAはかれらのリーダーだったらしく、まわりにいたB〜EがたおれたAの元へとかけ寄って取りかこむ。


「ザコがわらわらと群がりやがって……。……よほど死に目を見たいようだな?」

 剣を握るカズトの顔からは何も感情を読み取ることができないが、再三現れるザコ敵に痺れを切らしたようだ。

「(あ、怒ってる)」

 レンカはなんとなく察した。

「さあ、次はどいつだ?」

「ひい!」

「死にたくない!」

「すんませんでした!!」

 珍しく戦う覇気を見せたカズトに恐れをなして、ゴブリンたちは倒れたAを抱えてその場から脱兎のごとく逃げ出した。


 あっという間に彼らの姿は見えなくなった。

 追いかける気もなく、彼らに興味を失ったカズトは静かに剣をしまった。

「二度とオレの前に現れるな」

「どっちが悪だかわかんねぇな……」

 レンカは呆れていた。


 そして二人は街を目指して歩き始めた。それからこの辺りに住まうモンスターがカズトを見るたびに逃げ出すことがしばらく続いたという。


――To the next adventure...

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