advent.01
とある森の中。四人は歩いていた。
「ホントにこの道であってるのか?」
「あたりまえさ! ボクの冴えわたるカンを信じろ!」
「えらそうだな」
「もう、さっきの道ぜったい左だった! ミナたち迷子だよ!」
「まだ迷子だって決まったわけじゃないだろ!?」
「道がわかんない時点で迷子じゃないのか……?」
「全部クズリオのせいね!」
「そうだな」
「ボクはクズリオじゃなくてリオだ! って、カズトまで同意見かよ!」
「わーい、カズトと同じ意見っ!」
「うざ……」
ミナがわざとらしくカズトに抱きついてきたので、カズトはなんとかそれをひっぺがそうとする。
しかし、見渡す限りを樹木に囲まれているこの状況はだれがどう見ても迷子だ。
「うーん……。とりあえずリオのカンはあてにならないってことはわかったけど、この状況はどうにかしないとまずいよなぁ」
「ちょっと、レンカちゃんまで!」
「そろそろ日も暮れるだろうな」
「森の中で野宿? えー、それはヤダー」
「……ひっつくな」
ミナは何度引きはがされてもカズトにくっついてくる。
「じゃあ、こんなのどう? どうせこの森、またザコが現れるでしょ。そいつらに縄つけて森の外まで案内させるの」
「ふうん、あのザコどもの有効活用か」
「ザコ、ザコ……。って、たしかおまえはそんなザコどもの幹部……」
「ミナ、過去を引きずる男ってきらい」
「は?」
「というかクズリオがきらーい!」
「はあっ!?」
リオの手がホルスターの銃に手が伸びる。それを見たミナも手元に光が集まっているようにも見える。
「ほらほら、ケンカすんなって」
そう言ってレンカはミナの肩に手を置く。
「……ウワサををすればなんとやら、だな」
カズトが手に剣を取ると、森の茂みから魔王軍と思わしき二体のモンスターが出てきた。
「見つけたぜカズト!」
「今度こそ倒してやる!」
「都合よく出てくるあたり、おまえらは奴隷としては合格だな。まあ、ザコなんだからそれぐらい空気を読んでくれないとおまえら利用価値ないしなぁ」
「カズト、本音出てるよ」
そう諭すミナも半笑いだが。
とうぜんながら、敵2人はわかりやすく怒りをあらわにして、持っている棍棒をふり上げる。
「……怒ってますけど?」
「いらん挑発をしてるからな……」
リオとレンカはあきれているが、しぶしぶ戦いの構えをとった。
*
カズトの剣によって弾かれた棍棒が敵の手を離れて地面へと落ちる。4人でかかるまでもなく、カズトが1人で2体のモンスターを相手していた。
「ヒィっ!」
「すんませんでした!」
あまりの強さにおののき一目散にその場から逃げ出そうとするが、
「どこに行くつもりだ?」
行く先を、銃口を向け待ち構えていたリオによって退路をふさがれていた。
後ずさりしつつ反対側に逃げようとするが、反対側からはミナが有無を言わさない笑顔で立っていたのでそれもかなわなかった。
「ひッ……!」
「悪いな。アンタらにはやってもらわないといけないことがあるんだ」
レンカは困ったような顔をして逃げ場を失ったモンスターたちに言葉をかける。
すかさずミナが魔法で作った紐を彼らの首にかけた。いつの間に用意したのだろう。
「返事の必要はない。この森の出口まで案内しろ」
「ひ、ひいぃ!」
怯える敵に情もくれず、カズトは持っていた剣をモンスターの首元にそっと当てる。
「さあて、案内役も手に入ったことだし、きちんと働いてもらおうかしら。 死ぬまでこき使ってやるわ。ほら、案内しなさい!」
「あの二人絶対楽しんでるな」
紐をつけられてぐいぐい引っ張られていくモンスターたちに、さすがのリオとレンカも同情した。
同情はしたが助けるつもりはなく、ただあわれんだ。森から抜け出したいのは2人も同じだったからだ。
こころなしか楽しんでいるであろうカズトとミナに続いて2人も移動を開始した。
――To the next adventure...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。