SECTION-13-黒の脅威
逃走してから凡そ一時間後、グローブは速度を落とした。
もっとも、それでも人が走るにしてはかなりの速度を維持している。
「あの、降ろしてくれれば私も走るよ?」
「いや、まだ安全な距離じゃない。狭苦しいかもしれないが、もう少し我慢してくれ」
提案を直ぐに断る。そんなグローブをレンゲは心配そうに見上げていた。
息は荒く、顔色も悪い。まるで水でもかけられたかのように汗を流し、湿った感触はレンゲの服越しからでも伝わる。もっとも、彼女はそれが不快というわけではなく、無理をしているような青年を按じていた。
グローブはまともな休息をとっていない。街での《ÜG》との交戦後は直ぐに移動。
その後、レンゲを追い掛けるために全力疾走し、今も逃げるために先程まで全力で走っていた。
速度を落としたのもワザとではない。本来であればもっと距離を稼ぐために、死力を尽くして走るべきなのだが、最初の頃に比べて速度が落ちたのは、レンゲが思っている以上にグローブが疲弊しているからである。
しかし、そんなことを吐露するわけにもいかず、弱ったところを見せれば、自分が抱える少女は不安になるだろう。そんな強がりだけで、グローブは走っている。
そんなグローブを見つめながら、レンゲは何か言おうとして、押し黙り、また言おうとして再び黙る。そんな繰り返しをしていた。
走っている最中に自分が喋りかければ邪魔になるのではないかという遠慮や、そもそも言いたいことが定まっていないゆえ、先程から憂鬱そうに悶えていたが、
「…………うん!」
しばらくすると何かの覚悟を決めたのか、気合を入れるように両手で小さく握り拳を作り、強い眼差しをグローブに向ける。
「あの!」
「どうした? まだ、窮屈というなら――」
「違う! そうじゃなくて……」
レンゲは一瞬俯き、再びグローブを見上げる。
「やっぱり、いいよ」
「何がだ?」
「私のせいで貴方にまで迷惑をかけるのは、嫌だから。ここで置いて行って」
「…………」
グローブは黙したまま自分が抱き上げている少女を見る。
静かに自分を見下ろしているグローブを見て、レンゲの胸がちくりと傷んだが、続けて言葉を振るい出す。
「あの街の人、私のせいでいっぱい死んじゃったんだ。謝って許されることじゃない。今だって、貴方と別れたところで、もう貴方が許されるわけじゃないけど、でも、貴方一人だけなら逃げ切れると思うから、私をここに置いて行ってほしい」
「なら、君はどうする?」
「戻って……あの人達に従うよ」
「震えながら言うことじゃないな」
グローブの言葉どおり、本当は戻ることなど嫌だった。
再びあの場所に行けば、今度は誰も助けてくれはしないと分かっていた。
目を閉じ蘇るのは、見知らぬ男達に囲まれる光景。思わず直ぐ近くの温もりに縋りそうになるのを、必死に抑えた。
レンゲは恐怖を胸に抱きしめながら、精一杯の想いを伝える。
「それでも、自分のせいで誰かが傷つくのは嫌だったから!」
「それは俺も一緒だ」
「え?」
彼女が目を開けると、既にグローブは前を向いていた。
「誰かが傷つくのは俺も嫌なんだ。だから、君を置いてけない。もう少しで最後なのに、ここで君を見捨てたりしたら、俺は何のために《錬成者》になったのか分からない」
「最後?」
レンゲのその質問をグローブは答えない。いや、答えられなかった。
抱えられたレンゲに分かったことは、いきなりグローブの顔が強張り、急に立ち止りながら、鋭い視線で振り返ると、抱えていたレンゲを投げ捨てるように放り投げた。
「え? きゃあ!」
急に解放されたレンゲはそのまま空中にから地面へ落下する。
「痛い……」
先程していたことは打って変ったグローブの行動に困惑しながら、痛めた膝を抑えながら立ち上がり目を向けると、そこにいるはずであろうグローブの姿はいなかった。
瞬間、爆音。ドーン、と響く轟音にレンゲは驚きながら空を見上げると、空中で炎が弾けるように広がっていた。
続けて、ドシャリと炎の中から何かが落ちてきた。レンゲは一瞬それがなんであるか分からなったが、次の瞬間、大きな悲鳴を上げる。
それはグローブだった。だが、その服は焼かれたように焦げており、体の到るところに火傷の跡がある。
グローブは突如として自分達に向かってきたミサイルを察知し、レンゲを放り投げて逃がすと、剣を取り出してから空中に飛び上がって直接迎撃したのだ。
無論、爆発の衝撃をまともに受けたが、地上で爆発すればレンゲにも被害が及ぶゆえの処置であった。
ボロボロの状態になりながらも、空から落ちたグローブはレンゲを背にして直ぐに立ち上がりると空を睨む。正確にはその先、空中で起きた爆発の向こう側にいる巨大な何か見ていた。
『はははははッ! 自分からミサイルに突っ込むなんて、どんな死に急ぎだよ!』
電子音越しの響くような甲高い声を聞き、グローブが驚愕する。爆発の向こう側から現われたのは、夜の闇よりも更に暗い漆黒の巨人。
人の三倍ほどは在りそうな体躯で、その姿はまるで中世時代に存在した全身が甲冑に包まれた西洋の騎士。背中には一本の剣と、空を飛ぶためのブースターが火を吹きながら存在した。ブースターの横にはコンテナが存在し、そこからミサイルと撃ち出したのであろうと予測する。
だが、グローブは空中にいる黒い騎士に驚いたわけではない。その声に驚愕したのだ。
「ラウレル・アーデン! なぜ貴様がここにいる!?」
『仕事に決まってるだろうがよ、イバラの弟分よぉ!』
苦虫を噛みしめたようにグローブは顔を歪める。追手がくるとは思っていたが、よりにもよって最悪な相手が来たものと心の中で悪態をつきながら、グローブは剣を構える。
グローブはこの男を知っていた。
ラウレル・アーデン。古株の傭兵にして、同じ《イクシード》の《錬成者》だった。
グローブはその性格から毛嫌いしているが、ラウレルは自身が兄と尊敬していたサルトリ・イバラの同期であり、自分よりも長く戦場を駆けていた実力は正真正銘の本物。
「随分と速い到着だな。不真面目な貴様とは思えない」
『おいおい、俺はいつも真面目だぜ? それよりも、相変わらず先輩に対しての言葉遣いがなっていないなぁ? イバラから習わなかったか? って、無理か! アイツも礼儀作法を御大事にできる奴じゃねぇもんな!』
「それは貴様もだろ」
『ひゃははは! そりゃあ、違いねぇ!』
「……レンゲ」
人を逆撫でするような声に苛立ちながら、グローブは振り向かずレンゲに声をかける。
「東に向かってくれ。事前にこの辺りの地形を調べる限り、この先に深い森ある。そこならば姿を隠せるはずだ」
「あ、貴方は?」
「コイツの相手だ」
レンゲは不安げな声をしていたが、励ますことをグローブはできない。そんな優しい言葉を宣言できるほど、目の前の相手は甘くないのだ。
彼ができることは精々自分が出来る限りのことを示すだけ。
それでも一向に動く気配を感じないレンゲにグローブはワザと冷たく言い放つ。
「邪魔だ。早く行け!」
「っう!」
息を飲むような音。しばらくするとレンゲはグローブの指示に従って走り去った。
悲しませたかもしれない。怒らせたかもしれない。嫌われたかもしれない。
だが、彼女がこの先無事でいられるのならば、それでいい。せっかく、人並の世界に歩める機会ができたのだから、振り返らずに走ってほしい。
自分にできることはそうやって祈ることと、逃げ出すことできた彼女を再び囚われの世界へ戻そうとしたことの贖罪。
『おいおい! 女に冷たいじゃねぇか? イバラの奴は女の扱いはそれなりに上手かったはずだが?』
「いちいち比べるな。俺と兄貴は違う」
『はっ! 野郎の背中を追っていた奴の言葉かよ!』
ズドン! と大地が揺れる。空中で停滞していた黒騎士が地上に着したのだ。
『おら、土俵に上がってやったぞ? ちっとは楽しませてくれるよな?』
ラウレルは目標であるはずのレンゲを追わない。先に障害であるグローブの排除、という名目だろうが実際それが目的ならば態々地上に降りずとも、空から攻撃したほうが効率的だろう。
戦闘狂。グローブがラウレルを毛嫌いしている理由の一つだ。
この男は快楽的に戦闘や残虐行為をする人格破綻者なのである。任務という言葉で片づけて、いままで不必要な命を散らせたり、己が戦闘欲を満たすためにワザと敵に武器を送ったりするような男なのだ。
それによって被害が拡散したところでラウレルは気にせず、求められた結果と自らの性を満たせれば良し、そんな男だ。
問題のある男だが、それでも《イクシード》が在籍を許しているのは、それ相応の実力ゆえだろう。それほどまでにラウレルという男は強い。
正眼しながらグローブは強敵を前にして、一つの疑問を訊ねる。
「戦う前に聞く。それは《ÜG》か?」
『ああん? 見てわかんねぇのか? まぁ、試作段階の奴だが、そうだぜ』
その言葉を聞いて、解せないとグローブは思った。
《錬成者》でも《ÜG》は乗れる。だが、戦闘になると話は別だ。
そもそも《錬成者》とはコスト削減の他にも、従来の兵器であった《ÜG》に単身で対抗できるため生み出されたものでもある。
そして、《錬成者》が《ÜG》に乗った場合、その反射神経があまりにも鋭敏なため、脳で考えていた動きと実際に《ÜG》が動き出すまでに誤差が生じるのだ。
僅かなズレだが、そんな僅かなズレが他の《ÜG》や《錬成者》との戦闘時に脚を引っ張るのである。ゆえに《錬成者》が本気で戦闘する
酔狂な行為だとグローブは考えたが、余裕を見せている内に精々隙を突かせてもらうまで。
グローブが大地を蹴る。まるで砲弾が打ち出されたような速度で、一気にラウレルが乗る黒い騎士まで距離を詰めた。
間近で見ると、黒騎士はやはり人間よりは大きい。だが、他の《ÜG》に比べるとサイズは小柄だ。全高三メートル以上、目算して自身と二倍ぐらいの巨大な相手に、グローブは真っ向から斬りかかった。
そもそも、まだ日がある内に交戦したマフートは十メートルもの巨体だったのだ。今更、自身の身長よりも倍程度ある相手などに腰を引かせることはない。
ラウレルが乗る黒騎士も動く。背中に背負っていた片刃の剣を抜きながら、そのまま叩きつけるようにして、グローブの剣戟とぶつかり合った。
大気が弾けた。二つの剣のぶつかり合いは周囲に余波を撒き散らせる。仮にレンゲがいまだこの場にいた場合、彼女の体は余波だけで軽く吹き飛んでいただろう。その剣と剣が鬩ぎ合い、苦渋の色示したのはグローブだった。
自身と倍近い相手とぶつかり合えば、当然の結果だと揶揄されるかもしれないが、グローブは《錬成者》、その腕力は見た目以上の馬力を誇っている。
だが、それは向こう側も同じ。《ÜG》は巨大な分だけ破壊力を増し、一つの動作だけで惨事を引き起こせるものだ。
それゆえ、グローブは想定外の力に驚愕する。
このサイズの《ÜG》にしては、パワーが桁外れに高い。試作、とラウレルは言ったが、小型化された強力な動力源でも積んでいるのかもしれない。
しかし、そんな想定外の事態だけで圧倒されるほどグローブは弱くない。
圧殺するかのように迫りくる刃を、グローブは自身の剣を斜めし、相手の刃を自身の刃で滑らすようにして流す。
大地が爆発したように抉れる。そのままグローブがその場にいれば、流したところで、散乱する土崩れで深手を負ったかもしれないが、既にグローブは一歩前に踏み出し、剣を振り抜こうとしていた。攻撃を流してからの追い撃ち。
《ÜG》ならば対応できない機会で狙うのは、人で例えるならば左の坐骨部分。
「!」
しかし、グローブが振り抜く前に、黒騎士は素早く反応して左脚でクローブを撥ねつけた。グローブは振り抜こうとした剣をそのまま防御に回して受け止めようとする。衝戟。電流が流れるように体全体へ震動が伝わるとグローブの体が吹き飛んだ。
グローブは地面に転がるようにして倒れていったが、そのままの勢いで立ち上がり黒騎士との距離をとる。
「その、反応速度は!?」
驚愕するグローブに対し、黒騎士からラウレルの愉しげな声が響く。
『試作型錬成者専用人型ÜG、エリゴス。まぁ、《ÜG》と言っているが強化服みたいなもんだ。ただの《ÜG》を相手にしてると思っていたら、今度は死ぬぜ?』
試作型錬成者専用人型ÜG、グローブには聞いたことないものだったが、《ÜG》の反応にしては高い。機械越しなら、操作し、実行されるまでの間。仮に機械だけなら、計算され、実行されるまでの間。その間を狙ったグローブの攻撃は、相手の反射的行動で遮られた。
そこで一瞬考えを巡らせる。これほどの反応速度ならば、神経でも繋がっていなければ無理だ。ならばあえて接近戦をするのではなく、遠距離からの攻撃でも人体に損傷は与えられるはず。
「ならば、これで!」
グローブの大剣に青い電流が迸る。その場で閃光を纏った剣を一閃させると、そこらか発生した電撃が黒騎士――エリゴスを包み込むようにして襲う。
回避はなかった。包み込むようにして襲いかかる青い電流をエリゴスはまともに浴びるのを確認すると、そのままグローブは疾風の如く駆け、そのまま青い電流の刃を振り落とした。
神経が通っているならば体が麻痺して動けない。動けるとしても先程よりは鈍いはず。
しかし、グローブの予想は裏切られ、エリゴスは先程とまったく変わらない動きで、青い電流の刃を受け止める。
「神経は、通っていない!?」
『いや、通ってるぜ? じゃないとこんな反応はできねぇ。ただある一定レベルの感覚だけは全て遮断するだけだ』
「そんな、都合のいい――」
『なにを今更。てめぇが戦ったマフートのヒート・イーターに比べれば簡単に作れるぜ。そう考えると、無駄にヒート・イーターを消費したのはもったいなかったな』
その言葉を耳にしてグローブが更に驚愕した。
「!? まさか、街を襲ったのは!?」
『あれれ? 気づいてなかったのかよ? てめぇが襲ったコンテナの中身、他にもマフートがあっただろうに。まぁ、ヒート・イーター付きはあれだけだったけど。お前たちが既に見つけてるんだったら、無駄に死体増やして言い訳することもなかったわ、マジで』
「貴様ッ! 紛争鎮圧する《イクシード》が、テロを起こしたのか!」
『戦場で人を殺そうが、平和惚けした街で人を殺そうが一緒だろうが。お前だって、《イクシード》がお綺麗な組織ではないことは分かっていただろ?』
確かに《イクシード》は善意に満ちた組織ではない。
それでも《錬成者》のために人体実験や、今回のような《恩恵種》の件があろうとも、世界の必要悪として争いの火種を消してきたはずだ。
《イクシード》中には己こそが正義と信じて戦う者がいる。
「確かに、お前の言うとおり《イクシード》は綺麗な組織じゃない。巨大になるにつれて、思惑も多数存在するだろう。だが、根幹は戦いを生み出すことではないはずだ!」
『ああ、そうだぁな』
その声は何処か嘲るように、そして納得したように響いた。
『だからこそ、俺も《イクシード》を辞めるんだよ』
「な――」
絶句するグローブを余所に独り言のように語る。
『《イクシード》は力云々に関しては悪くかった。いや、上々過ぎた。これが世界征服を企む悪の組織ってとこなら楽だったが、その実は逆。世の中の安定や平和だ。
俺はそんなために戦ってきたわけじゃねぇ。俺は戦争屋だから、死ぬまで戦争してぇ。けど、戦う場所も減って来た。いや、資源を気にしてどこも消極的になり過ぎた。更に《イクシード》で残った火種も狩られる始末よ。最初はそれだけで我慢しとくつもりだったが、お譲ちゃんの存在で話は変わった!』
お譲ちゃん、とはレンゲ、つまりは《恩恵種》のことだろう。
グローブはそう思いながらも、これ以上は語らせないとばかりに踏み込むが、青い電流の刃はエリゴスが持つ剣を前にして少しも動かなかった。
必死のグローブを余所に、ラウレルは狂喜に満ちた声で叫ぶ。
『無限の資源、最高じゃねぇか! なら、それを世界中にばら撒けばどうなる? 資源問題が解決されて世の中平和になります? じゃなぇな! 起こるのは更なる戦争だぁ!』
「なに?」
『資源枯渇によって恨みを抱えたまま、復讐を我慢してる国がどれだけあると思ってんだ? 欲望を吐き出したいのに堪えてる奴らがどれだけいるんだ? そいつらに枷がなくなれば、この世は闘争に満ち溢れる! いいね、最高じゃないか! 妬み、貪り、喰いあう! まさに生命の本質じゃねぇか! 《イクシード》に独占なんてさせねぇ! 俺がばら撒く、俺が世界にばら撒いて、もっと世界をヨくしてやるよ!』
「そんな、そんなことのために、レンゲを利用させない!」
『はっ! 青臭いガキが惚れたりしたのか? まぁ、そのお陰で手間ぁ減ったがよ。
お前が他の奴らを眠らせたから俺は楽にやれたさ。ちっとは俺も一緒に痺れたが、根性入れたら動けたから、そこは勘弁してやる。ちゃんと皆掃除できたしな』
「貴様ッ!」
『おうおう、吼えるねぇ。けど、吼えるだけの犬はいらねぇわ。やっぱ、イバラの弟分だろうと、限界来たらこの程度か』
冷え切った言葉と同時に黒騎士が動く。
静止していたエリゴスは受け止めていたグローブの剣を出鱈目に押し退ける。
当然、そこにかけられた力は相当なものだった。計り知れない圧力を前に、グローブの態勢が崩れる。
一閃。エリゴスが振り落とした斬撃はグローブの右肩から切り裂き、そこから大量の血液が噴水のように吹き出す。
「がああああああ!」
グローブの絶叫。そこに容赦なくエリゴスの拳が叩きこまれた。
ぐしゃりと、肉が潰れる音。
そのままグローブは空高く吹き飛び、そのまま地面に激突する。
グローブ・アマランスは戦いで倒れる度に何度も立ち上がった。しかし、その男は微動もせずとうとう動かなくなった。
ラウレルは片手間で操作しながら生命反応がないのを確認すると、納得と落胆のため息を吐く。
当然の結果といえば当然かもしれないが、あまりにも呆気のない戦いだった。
いや、戦いですらなかった。
ラウレルはグローブが不調であることは知っている。
直接調べたわけではない。だが、時折見た時、明らに動きに切れが無くなっているのを目にした。
それが今まで戦場に身を置いている経験から、調整に調整を重ねた 《錬成者》に肉体負荷が訪れた症状だと理解する。
本来、ここまできたら、退役するか、別のアプローチをかける他ないのだが、グローブという男は愚直にも剣を振い続けた。その慣れの果てがこれになるのならば、あまりにも哀れだろう。
どうせなら、真にランクAとして相応しい全盛期の実力を持った時に殺り合いたかった。
だが、そんな今更のこと考えても仕方ない。
ラウレルはエリゴスの背中のバーニアから火を吹き出して空を飛ぶと、そのままレンゲが逃げ去った方角に向かって消えた。
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