第2話 同時にみじめさを感じる俺

 俺は大ケガを負って兄に自宅まで運んでもらった。

 ソファーの上で全身に激痛を覚えながら兄の手当てを受ける。ケンカの弱い俺は、ケンカの強い兄を恨みはしなかった。

 ただ、みじめさを感じる俺だった。

 キングと呼ばれ恐れられている兄は俺には人としての優しさを見せてくれた。ぶっきらぼうな物の言い方だけど、兄は優しい。

 ケンカの弱い俺でごめん。

 せめて俺もケンカが強かったら、兄に迷惑をかけることはないだろう。

 それが兄に言えなかった。

 そんな俺と兄の元にギャル三人組が遊びに来る。

 ソファーの上でぼろぼろの俺を見てギャル三人組は笑顔がなくなる。兄がギャル三人組に何かを話している。

 同時にみじめさを感じるのは、女の子と恋愛すら出来ないことだった。俺はモテる兄にちょっとだけ嫉妬する。

 兄とギャル三人組は話が終わって、ギャルのひとりが俺の頭を撫でに来る。

 俺はこの時に複雑な気持ちを抱く。ケンカの弱い俺、モテない俺、そんな俺に触れてくれた女性。

 そのギャルは目が優しい。

 俺は感情を押し殺す。

 しょせん、一時の同情だ。

 俺はそのギャルから目をそらした。


 ギャル三人組は兄と何もせずにその日は帰った。

 その日の晩に俺は兄にこう言われた。

「あのな、俺はいつか海外に行きたいんだよ。黙って聞いてくれ。キングって呼ばれ恐れられてイヤになっているのは確かなんだ。弟のお前には迷惑をかけているのは充分にわかっている。申し訳ない」

 兄の言葉を聞いて俺は無言のまま、ソファーの上で横になっている。

 そしてひとつの目標が出来る。

 それは、兄に海外旅行をプレゼントすること。

 俺はキングと呼ばれる兄のことが好きだ。

 兄は男の中の男。

 尊敬している俺。

 夜は静かに過ぎていく。

 兄は俺のそばに居てくれた。

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